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Diary | ||
またしても戦場で深手を負ってしまった。 「そもそも、あのメイドの姿をした死霊……召使の分際で王に楯突くとは無礼千万、けしからん」 憤然としながらアル・マリクは華美な装飾を施された天幕──現在攻略の拠点とされている地点に勝手に立てた──の奥、絹の褥に身を横たえた。 今現在のこの肉体は、己自身のものではなく魂の器に過ぎぬとは言え、受けた傷の痛みは熱と共に伝わり、その不快さに益々眉間に皺が寄る。 幾重にも重なる布が、風で揺れる度に垣間見える常闇の空に、不意に失われた記憶の底から蘇る少女の面影が浮かび上がった。 行儀見習いを兼ねて王宮の女官として召し出された、はしばみ色の瞳の少女。 くるくると良く表情を変える、素朴な娘の純朴な反応が、誰もが仮面をかぶったように本心を見せず余所余所しい王宮の中にあって物珍しく、酷く興味を惹かれた。 「我は全てを許される立場なのだ」 ───気紛れに手折った可憐な花は、翌朝鐘楼から身を投げて儚く散った。 涙を浮かべた青ざめた彼女の幻が、己を切り裂いたメイドゴーストの青白い姿に二重写しのように重なり、アル・マリクはそっと溜息を漏らして目を閉じた。 と、言う妄想をしながら二日間療養した。 ああ暇だ。 |
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今回の滞在 | ||||||
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