Infomation | ||
|
||
Diary | ||
流れ星のように人の魂が帰っていく。 ある小高い丘の上、召喚師によって帰ってい英雄たちの魂。 その場にソフィアと、マリアの姿もあった。 「……本当にいいの? ソフィア」 ――あぁ。私にはまだやり残したことがあるからな。 問うと心の中で返事が返ってきて、マリアはくすりと笑った。 いつの間にか二人でいるのが当然だった。 ソフィアがいるから、どんな敵の前に立っても怖くなかった。 流れ星が逆回りするように、光となって帰っていく英雄たち。 綺麗だ。素直にそう思った。 今まで肩を並べて戦ってきた者たちと、もう、会えない。 それは寂しかった。 でも、彼らの中にだってあたしみたいな普通の人がいる。 ただ普通の生活をしていたのに、異世界に飛ばされて。 そこであたしたちの為に一生懸命戦ってくれたんだ。 ……ソフィアも。 帰る場所がないから? 茶化すように効くつもりだったのに、つい真剣な感情が出てしまった。 たとえ元の世界に帰ったとしても、ソフィアの国はもう、無い。 ――それも無いとは言わないが。だが、実際は別のところにある。 何? ――……私には義務があるからな。 義務ってこの世界を救う義務? ここは、あなたの世界じゃないのよ? ――我々には義務がある。 ――Noblesse oblige! ――高貴ゆえの責任! ――自らを高貴たらんとするものは、 ――それゆえに大いなる責任を持たなくてはならない! ――我々が享受した利権の代わりに、何ゆえ返すものがないというのか。 ――立て、そして剣をとれ。 ――我々が高貴であるがゆえに! 誰の言葉? ――私が師と仰ぐ、騎士公と呼ばれたシュナイゼル伯の言葉だ。 ソフィアの思い人? ――なっ 何をバカなことを!それに伯は、私よりふた回り近くも年上だぞ! あら、恋愛に歳は関係ないのよ? ――先の言葉は、私の国が大戦に入った直後に伯が遺した言葉だ。 ――彼とその私兵は、領民を逃がすために勇敢に抗戦して。 ――……全ての民を逃がしたあとで、一人残らず戦死したそうだ。 ……そう。 ――私の父に当たる人だった。 ――彼のもとで私は幼少時代を過ごし、そして精神を学んだ。 ――高貴たろうとするものは、その責任を果たさなくてはならない。 ――私には、まだやるべきことがあるんだ。 ――……もっとも、マリアが体を返してほしいというなら、すぐにでも返そう。 あたしは。 あたしは、いいのよ。 ただの村娘だったあたしが、こうして刺激的な毎日を送れるのは、あなたのおかげなんだから。 ――しかし、これから先は英雄も減りさらに危険が―― それに、あたしはあなたが好きよ。 帰ったら二度と会えなくなるでしょう? ……それは寂しいわ。 ――……そうか。 ――ならば誓おう。お前の守護を、この盾に。 ふわり、盾をあたしの腕が持ち上げる。 あたしだけでは絶対に持ち上がらないその盾を、ソフィアは軽く扱って見せる。 そうして救うのだ。多くの者たちの命を。 そうやって、ずっと走ってきた。 「有難うソフィア。きっとあなたなら。……ううん、あたしたちなら、この世界も護れるよ」 ――あぁ、きっといつか。この空に再び光をともすために。 召喚師のいる丘を後にするとき、あたしはもう振り返らなかった。 別れは、さみしい。でもこれからもずっと、一緒にいる仲間もいるのだ。 隣を一緒に降りる剣士がいる。魔導師もいた。 ただの屋台のおじさんや、猫までいる。 彼らがこの世界を守ってくれる。 そしてあたしも。 彼らが力を貸してくれたのだから、絶対にこの世界を救ってみせる。 手にした盾の柄を、ぎゅっと握り締めた。 初めて手にした時には重かったそれが、いつの間にか手になじんでいるように感じた。 |
||
Message(Personal) | ||||||
|
||||||
依代の記憶保存 | ||||||||
|
||||||||
Message(Linkage) | ||
|
||
最終選択 | ||||||||||
|
||||||||||