石楠花の一週間

「今回の攻略拠点は「常闇の祭祀殿-懺悔者の道」ですね」

「時間になったら集まるのよ」

「……こんばんは。メッセンジャーサービスです」

「……メッセージの送信ですね。承ります」

「メッセージは届いておりません」

「……こんばんは。取引サービスです」

「……出品内容を伺います」

「……1件目の出品は以下の通りで受理しました」

「……以上受け付けました。それでは良い取引を」

「あっ、いた！　おーい！」

「なーなー。この辺りに、黒ずくめの男見なかった？　紅色の剣をかついでいるからすぐわかると思うけど」

「知らない？　まあいいや、あたしの名前はルヴィーダ。アンタ、召喚士の味方だろ。だったらコレやるよ」

「少し前まで僅かに生産していた銀貨だ。カレイディアで一番高級だった奴だぞ」

「ちなみにただの銀貨じゃない。持ち主の『心』の力を吸収し、別の力に変換する魔法のアイテムなんだ」

「たしか、ドラ、ヴァとかイーナントカって長い名前が付いていた気がするけど……忘れた。面倒だから、あたしたちは見切りの銀貨と呼んでるよ」

「銀貨と相性がよい近接系クラスが戦場に立ち続けていれば、銀貨は『心』を吸収し、別の銀貨を生む。その銀貨を装備すれば、戦い続けるための新しい力を得られる。具体的には対応する相手の特殊能力を無効化するはずさ」

「この無効化現象を『見切り』って呼ぶんだ。たとえば、『即死見切り』があればソウルスティールに無敵になるし、『睡眠見切り』なんかがあれば、戦闘中に寝たりしなくなるんだ」

「それと、相手の攻撃を無効化する防御的なものだけじゃなくて、相手の防御効果……たとえばバリアやプロテクトを無効化する攻撃的なものもある。バリア張ってばかりのうるさい魔法使いなんか、これでばっさり倒せるな！」

「……ま。装備できるのは一度に一つまでだから、どこか弱点が出来てしまうけどさ」

「オリジナルの銀貨は近接系クラスであるアンタらにしか扱えないけど、新しく生み出されたものは少し劣化されているせいで、他の奴らでも扱えるはずさ。余ったら、取引メイさんに頼んで売ってもらうといいぞ！」

「生み出された見切りの銀貨は仮初めの存在だから、すぐに壊れるし、修理も出来ないから注意しなよ」

「でも生み出されたときにレア〜ギガレアって判定がされてて、レアなものはなかなか壊れない。これは貴重だな」

「ま、せいぜい大事にしてくれよ。もうあげないからな！」

「そろそろ時間よ。集まりなさい」

「攻略ですよ攻略だよ攻略だぞ攻略に行くぞっヒョォォ！！」

「……落ち着きなさい」

「アナタは確か、私の護衛に志願してくれているようね」

「今回は必要ないわ。次の機会に頼むわね」

「やる気は十分のようね。頑張りなさい」