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Before EverNight -3- ========== 1月6日、六甲山系の某所。車道から外れて早数時間、異世界へ赴くため学達4人は道なき道を歩き続けていた。 「まだなんすか? 矢田さん。日も暮れて大分経ちますけど……」 「確かにこっちのはずだ。ここらに丁度いい大きさの広場が――お、あそこだ」 案内役の矢田が指した方向には、木々がそこだけ根を生やすのを避けているかの如く不自然な空間が存在している。広さは7m四方といったところか。 「――扉が開くまでもう数時間、といったところかしら。案内有難う、矢田さん」 「おう。しかし、あんな所に好き好んで行く奴が居るとは驚きだな。学っつったか」 首だけぐるりと振り返り、学の顔をまじまじと見る矢田。彼の視線に、学は愛想笑いで返答するしか無かった。 「まあ、俺も短期とはいえ向こうで暮らしてた身だ。後輩君の健闘は祈ってやらねえとな……何か向こうの世界について聞きたいことがあるなら、俺の知る限りのことは答えるぜ」 「んー……まあ、聞きたいことは山ほど有るんですけど。んじゃ初めに、実戦でのコツとかって何かありますか?」 学の問いに、矢田は広場の中央にテントを設営しながら答える。 「戦いのコツ、なあ。俺は運良くボウガンを使える依代につけたから良かったが、お前は一応接近戦主体でやるつもりなんだろ? その得物を見る限りは」 学の背には、道中で狗神に手渡された木刀を入れた細長い布袋が負われている。狗神の実家は古武術の道場をやってるとか何とかで、こういう武器を結構な数所有しているらしい。殺傷力の高い部類の武器――真剣や鎖鎌等――もあるにはあったが、慣れないうちはこちらが怪我をしたり、最悪味方側に損害を与える恐れがあったので、両者で話し合った結果木刀に落ち着いた。 「ですね。そちらみたいに依代の得手不得手が分かれば、それなりに対応はするつもりですけど」 「うーん、それじゃあな……俺が観察した限りでは、敵に最も近い前衛の仕事は『立ち続けること』だと思う」 前列に立つものは、敵の攻撃を弾き、流し、時には自らの身体で受け止める。そうして得られたチャンスを、後列の魔法使いやスナイパーが逃さず仕留める。向こうでの戦いは、おおむねそのような流れで進むことが多かったらしい。 「トーシロには辛い役どころかもな。やばい時は、無理せず逃げるのも勇気だぜ」 「そうね。私としては個人的な力量より、戦局を判断する目を養うことを今回の旅では重視して欲しいかな。狗神君からは何かある?」 「……目に見えるダメージのやり取りはあくまで結果。戦いにおいては、むしろ目に見えないアドバンテージの奪い合いこそが肝要だ。決して周りに踊らされるな、踊るのは自分の意思においてのみという事を忘れるな」 「おー。よく分からんが、分かった」 苦笑いを浮かべながら、狗神の忠告に学は頷いた。 「ああ、そうそう。私と諸西さんからプレゼントがあるの、受け取って」 サリアは小さなリュックから包みを取り出した。学が開けてみると、そこにはそこそこの厚みがある本と白無地のロングTシャツが入っていた。 「諸西さんからは、向こうで自炊する時に困らないよう料理本。私からはケブラー繊維生地の防刃ロングTシャツ。本格的な鎧が着こなせるようになるまでは、これを使うといいわ」 「へえ……どこで入手したんですか、こんなもん」 「ネット通販で買ったの。一万五千円もしたのよ、大事に使ってね」 早速学がロンTを着込んでいる所で、矢田も思いついたように自分の指にはめてあるくすんだ銀色の指輪を差し出した。 「俺からも餞別だ。こんな何の役にも立たなそうな指輪でも、向こうでは意外な力を発揮することがある。俺の記憶が確かなら、この指輪にはいくらか傷を癒す効果があったはずだ、持ってけ」 「有難うございます、矢田さん」 その代り少し頼みがあるんだけどな、と矢田は学に言った。 「もし向こうで俺の知り合いに会った時はよろしく言っといてくれよ。弓や銃の事で色々話したレファラってねーちゃんに、魔法使いの草薙葉月、あと鈴木に田中だっけな……? 俺はびびって逃げ帰っちまったが、何だかんだで生きてるからそっちも頑張れってな」 「それなら、俺も一つ頼みがある。これを」 そう言って、狗神は学に使い捨てカメラを渡した。 「高校の後輩がマンガを描くとかで異世界っぽい風景の資料を探していてな。室井から見ていい感じの風景や人物に出会ったら、そのカメラで撮影しておいてくれないか。頼む」 「おっけー、任せとけ。何かこうしてると、里帰りか旅行にでも行くような気分だな」 「こら、あんまり気を緩めないの。今後を含めて、生きるか死ぬかの大勝負なのよ?」 「はは、姉ちゃんは心配症だな。ま、腹が減っては戦は出来ぬ、ここらで腹ごしらえといこうや」 手慣れた手つきで矢田が携帯用コンロを設置し、インスタントラーメンを作り始めた。それから暫くは、友人関係や大学の講義等の与太話をしながらラーメンを食べたりして4人は時間を潰していた。矢田はこういう話には馴染みが無いらしく、聞き耳を立てながらも自分は話すことなく4人分のコーヒーを淹れていた。 「で、狗神ぃー。噂の彼女とは結局どうなんよ?」 「先日もデートに誘ってみたが、近々主演の舞台があるとかで断られた。次は直接舞台に押し掛けてみるか」 「おいおい、それってストーカーじゃね? 意外に執念深いのな、お前」 「めぐは照れているだけだ、俺には分かる」 「……確かに思考はストーカーに近いけど、狗神君の言うこともまんざら外れじゃないのよね。いい加減めぐちゃんも素直になればいいのに――来た」 気がついたときには、既にそれはそこに在った。これから行く世界を象徴するように深く、どす黒い闇。それが渦を巻いて、4人の目の前に在る。 「準備はいいわね、室井君」 「ええ。いつでも」 「生きて帰ってこいよ、室井」 「お前より強くなって戻ってきてやるよ、狗神」 「無理はすんなよ。常に余裕は持っとけ」 「ええ。指輪ありがとうございます、矢田さん」 ナップサックと一振りの木刀だけを携え、彼は闇へと一歩を踏み出す。 「では」 いってきます。 学はそう言い残し、消えた。 「じゃ、私は帰るわ。要件が済んだ以上、ここに居る意味も無いし」 「もう10時だ、夜の山道は危険だぜ。テントはもう一つあるから、そこに泊まってけ」 「お気遣いどうも。でも、山道は使わないから大丈夫よ」 彼女が手を広げると、背に大きな翼を模した光が描かれる。それがふわ、とはためいたかと思うと、彼女は空中に浮遊し、次の瞬間目にも止まらぬ速さで東の空へと消えていった。 「……飛べるんだな、ヒトって」 「噂じゃ彼女、人間じゃないらしいですけど」 屈伸運動をしながら、狗神は言った。 「それじゃ、僕も失礼します。今日は珍しいものが見られて良かったです」 「話を聞かねえなあ、お前等は。山を舐めると怖いって小学生の時習わなかったか?」 「丁度いい訓練ですよ。道順は覚えてるから大丈夫です」 背を向ける狗神に、矢田はこの近辺の拡大地図らしきものを投げつけた。 「……持ってけよ。懐中電灯もいるか?」 「自分のを持ってるので。では」 懐中電灯のスイッチを入れて、狗神は木々の合間を滑るように、駆けていった。 「若いねえ、ったく」 やれやれ、と肩をすくませながら、矢田はテントの中へいそいそと入っていった。 明朝、矢田はテントから這い出し、おもむろにバッグからシャベルを取り出し穴を掘りだした。ざく、ざくと掘り進むうち、厭な感触が彼の手に伝わった。 「…………」 土を払いのけると、そこには矢田の死体があった。 「……最後の最後にドジ踏んじまったなあ」 矢田は自分の死体を見降ろし、微笑む。あの世界――カレイディアに行く直前、彼の魂は死んで朽ちゆく直前だった。しかし、召喚師に拾われた彼は運良く新たな身体、依代を得、生き続けることができた。 冒険を終えた彼に、二つの選択肢が突き付けられた。依代を解放し死ぬか、このまま依代を掌握し続けるのか。あなたなら常闇を離れて、このまま生き続けることも可能――矢田をこの世界まで連れ帰った男は、そう言った。 彼が選んだのは、後者だった。 「この身体なら、俺を殺した奴を殺し返すのも可能――ってのは冗談としても、襲われた時に対抗できるのは助かるな」 矢田の唇が歪む。 「これからもよろしく頼むぜ? あ、い、ぼ、う」 彼の頭の中に、声にならない叫びが響いた。 |
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今回の滞在 | ||||||
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Message(Personal) | ||||||
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Message(Linkage) | ||
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Ability Setting | ||
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Item Setting | ||
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Skill Setting | ||
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Lvup | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
レベルアップしました
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魔石交換サービス | ||||||||||
トレジャーで魔石と交換できそうなアイテムを獲得しました。
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攻略の時間になりました!! | ||||||||
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