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【ガルフの日記 続3週目 -first work】 かつん、かつん。槌撃つ響き。 真っ赤に熱せられる鉄、ごうごうと燃やされる火。 この音と熱の混沌が鍛冶の風景である。 しかし、初めて見る者には驚きの連続のようであり。 「うわー、すごい!これが鍛冶工房なんだ!」 「……これ、もうちっと静かにせんかの」 金属臭い鍛冶工房に似合わぬ高い声。 ライトなブレザーに蒼いソックス、いわゆる制服姿の女性が目を輝かせていた。 今流行の女子高生というやつだろうか。ぴょこん、とネコの耳っぽい装飾がゆれる。 魔法の学院攻略にあたり、潜入のために衣装を変えた面々も多かったようであるが… 女子高生にしては少々顔つきや肌が大人の色気を出している気もするが見なかったことにするのが吉である。 この美女といえなくもない青髪の剣士、名をルーネと言う。 「だって、こんなの滅多に見れないよ?」 美しい長い蒼い髪が特徴の女子高生(?)はとかく好奇心が強いようであった。 整った顔に輝く瞳は男を虜にするに十分たるが、自称ドワーフのガルフは一切興味がない。 今最大の問題はこの客が一切静かにするつもりのないことである。 発端はテンコ主任であった。 諸々の不手際で遅れたアクセサリー工房の初仕事。 「ネコミミ、だそうじゃ」 この一言で依頼をもってきた。 実にシンプルである。 「まさか、取り外しの効かない本物の耳なんてのぅ」 「今度無理矢理外そうとしたら斬るからね」 当初、外れるものと思い頭をひきよせて懸命に引っ張ったのだ。 「ほんっっと痛かったんだから!まだヒリヒリするよぅ…」 ぷくっと頬を膨らませる。そのことをまだ根にもっているようだ。 その後どう鍛えるか悩むガルフを横目に、見学していくと言って今に至る。 「とにかく、静かにしてくれんかの。先に他の仕事済ませるんじゃからの」 「ふぁーい」 そう言いながらアクセサリーの原型をがちゃがちゃ触る。 どうもネコミミと一緒に猫の好奇心が生えてきたんじゃないかと思ったが口には出せない。 ガルフは諦めて集中に務めることにした。初仕事の準備が山ほどあるのだ。 息を整えると、途中だった合金鋳造のテストに取り掛かった。 「あつーい」 「…………」 「あついよ、ここ!」 「…………」 「工房って結構暇なんだね」 「……………入り口付近で風にあたるとよいぞい」 「暇だよ」 「…………」 「ひーまー」 「…………」 「私にも何かやらせて!」 「……肌が焼けるぞい」 「……それは、ちょっと無理かな」 全く、作業がはかどらない事この上ない。 何かあるたびに話しかけられては当然である。 ようやく静かになったが、時は既に夕刻を過ぎていた。 「………さて、ようやく終わったぞい。問題はその耳じゃがの」 振り向くと蒼髪の女剣士は入り口付近の椅子に腰掛けて寝ていた。 すぴー、すぴーと規則正しい寝息が聞こえる。 最初の興奮が醒めたところに暇が重なったようである。 こうして黙っていれば可愛いのであるが。 「まあ、人間のおなごじゃ耐えられんじゃろうの」 やはりドワーフの女がいい、と1人うなずくガルフであった。 もっとも同職のブラックスミスには人間の女性が結構な数を占めるのも事実であるが。 「ふむ……とりあえず耳を調べてみるぞい」 今日最大の仕事が残っている。とにかく見ないことには判らないので、ここがチャンスとばかりルーネに近づく。 元がドワーフ故に気配を殺しているつもりで全く忍んでないが、よほど熟睡しているのか蒼い髪は全く動かない。 こっそり、というかがっちり、耳をつかむ。ぴくりと反応するも、やはり起きる気配はない。 細工を見るような目でミミの構造をじっくり眺める。 普通の猫と大差はなさそうであるが、そこまで猫の耳を凝視したこともなく。 「さっぱり判らんぞい……困ったのぅ」 顔を近づけてまじまじと見る。外見細身の女であるガルフがルーネの耳を覗いているのは多分に官能的であるが、残念なことに見学者はいない。 そのうち、ふっと息がかかる。耳がぴくり、と揺れた。 むしろ微かな刺激の方が危険のようである。息をかけないよう、相変わらず無骨な手で耳の付け根を探る。 「う……ん」 女剣士が身じろぎをした。が、ガルフは躊躇することなく耳を探る。集中しはじめたようだ。 どうも耳の付け根付近が固く、ここに何かをすれば補強は可能かもしれない。 ハンマーで叩くか何かガードするものを装着するか、何かを埋め込むか。 いずれにせよルーネが悲鳴をあげるのは間違いない。 身近に大きな危険が迫っているのも知らず、女剣士は時折気持ちよさげに喘ぎ声を洩らす。 無論、性的な快感ではなくマッサージ的な心地よさである。えろすは程々に。 しばらく手で耳を撫でたり押したりするも、何らヒントが見えてこない。 ガルフが諦めて手を離した、その時。 ぴょこん。耳が大きく揺れた。 「………ん?」 気のせいか、耳の毛並みがよくなったようである。 少し毛が艶っぽくなり、しなやかさを備えたというか、その。 「何か変化したかの」 試しに耳の裏を触ってみる。先程より手触りがいい。 感触のよさに思わず何度も耳を撫でてしまう。 「うん………」 色っぽい声が漏れる。男が聞けばさぞかし本能を刺激されるだろう。 やはり興味のかけらもないガルフは手先に神経を集中させる。 この時だけは、無骨な手先がまるで魔法のように器用になるのだ。 これがドワーフの名工たる所以である。 ぴょこん。 また大きく揺れた。何かが変わったのだろうか。 今度は毛並みではないようである。手を離し、注意深く耳を観察するが変わったことはない。 「ふむ…何かがおきたようじゃがの」 そう独り呟くと、反応がかえってきた。 「うーん……なぁに、大きな声出して……」 蒼い髪が大きく広がる。ルーネが頭をあげ、大きく伸びをしたのだ。 その拳が危うくガルフの鼻先をヒットするところであった。 「ほい、いきなり動いたら危ないぞい!」 非難の声をあげるとまたもルーネが顔をしかめる。 「だから、そんな大声出さないでよ!全く、頭痛いなぁ…」 「別段大声じゃないがの」 ぼそっと呟いたガルフの声。しかし、ルーネにはよく聞こえたようだ。 「だーかーら!せっかくいい気持ちだったんだから、もっと寝かせてくれても…」 恨みがましい声は中断された。 周りをきょろきょろと見渡す。蒼い髪がふわり、と広がり爽やかな香りが広がる。 「……あれ?なんだか明るくなった?」 「んー、そんなことはないぞい。ランプは付けたが昼よりは暗いはずじゃの」 「おっかしいなぁ、いつもより明るく見えるんだけれど。…それに、臭いし」 「作業が進まんかったから、薬品類を使う作業はしとらんぞい」 「そうなの?うーん、なんだか不思議。まるで感覚が鋭くなったみた……まさか」 ハッとした顔でルーネは立ち上がる。 何かを確かめるように己の手足を動かすと、すらりと剣を抜いた。 そのまま気合を軽くこめて横へ薙ぐ。 慌てたガルフが後ろへひっくり返り、さまざまなものが墜落した。 「いきなり剣を抜かれると困るがの!」 少々怒りをこめた声。しかしルーネは呆然と自分の剣を見ているだけである。 「………軽い。軽いよ、軽い!」 「何がじゃの」 「剣が、だよ。いつもよりはっきり軽い!それに、遠くまで見えるようになってる!」 「………気のせい、じゃないかの」 「違うよっ。なんだかよく判らないけれど、身体の調子がよくなったみたい!」 そう言うと飛んだり跳ねたり、まさにはしゃいでいる。 何かがよくなったようだ。これも先ほどの耳マッサージ効果、だろうか。 「耳もよくなっているみたい。ひょっとしておねーさんが寝ている間に?」 そう問う瞳はきらきらと輝いている。無礼な物言いであるが、根は純粋なよい娘のようだ。 こんな眼差しで見られると、性別種族を問わず返事がし辛いのも無理はなく。 「んー、んーと、そうじゃの、少しは触ったんじゃが…」 「やっぱり!ありがとう!こんな変化があるなんて思ってなかった!」 興奮気味にまくしたてる様子は可愛らしい。 ガルフは圧倒され、細かい説明する機会を失ってしまった。 本音のところは日が沈んだ今、早く酒が飲みたかったということかもしれないが。 結局、興奮が醒めるまで話を聞く羽目になる。 ようやく独りになり工房の鍵を閉めた頃には夜の帳がいよいよ厚くなっていた。 「全くうるさい依頼人じゃて。まあ………たまにはいいかの」 最近お気に入りの酒を盃に満たしながら、目を細める。 依頼人が喜んでくれれば、細かいことは忘れられる。 それはこの仕事の醍醐味の1つであった。 静けさを取り戻した工房は、やがて眠りにつき。 また新たな依頼を待つ―――― (Eno 289 ルーネさんをお借りしました。ご依頼ありがとうございました!) |
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今回の滞在 | ||||||
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Message(Personal) | ||||||
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Message(Linkage) | ||
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召喚士におねがい | ||||||||||||||||||
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Ability Setting | ||
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Item Setting | ||
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Skill Setting | ||
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アイテム工房 | ||||||||||||||||||||||||||||||||
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Lvup | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
レベルアップしました(EXP-260)
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アイテム工房(支払&次回の予定) | ||||||||||||
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攻略の時間になりました!! | ||||||||
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