アリスの一週間

「今回の攻略拠点は「怪鳥平原-速贄の森道」ですね」

「時間になったら集まるのよ」

「……こんばんは。メッセンジャーサービスです」

「……メッセージの送信ですね。承ります」

「……5件のメールが届いております」

「美味いか、それは良かった。
（怯えていた少女が果物の甘さに顔を綻ばせる様子を見れば目元を細めてぽんぽん、と頭撫でて布団に再び上肢を沈めた。
　血が足りて居ないのだろう、額を押さえて頭が重い、とぼやきつつ名を問われれば暫し思案してから首を横に振り）」

「──名を憶えておらぬのだ。
どうせ「王」で通ずる。そう大して必要もなかったのだろう。」

「ああ、どれ（本と共にアリスの体を引き寄せて目覚めた時と同じように抱き込む。
父親が子供に読み聞かせてでもいるようだ、と苦笑いしつつ指差された文字の順番を此方から読む、と彼女とは逆方向からなぞり直し）」

「『不思議の国のアリス』」

「『アリスは川辺でお姉さんの横に座って』……
（退屈していた少女が「遅刻しちゃうぞ！」と慌てながら懐中時計片手に駆けて行く兎を追って茂みの下の穴に飛び込む冒頭の物語を穏やかな低い声で読んでやり）」

「調べたい単語はサムライイーグルであるか。クックッ、いいだろう、貴様の知識欲を満たす手伝いをしてやるのである。さあ、存分に調べるがいい！」

「そろそろ結果が出たようであるな……。クックッ、なんだ、調べ疲れて動けないか。いいだろう。情報をまとめてやろうではないか」

「サムライイーグルとは！」

「分類はNPCであるな」

「怪鳥平原を飛び回る鳥である。獲物を捕まえる時には急降下し、強力な爪で引きちぎってしまう恐ろしい奴である。木の下にでも隠れておかなければなるまい。あまり防御力がないから、当てる自信がある奴なら意外に簡単に仕留めることが出来るぞ」

「……ということだ。知識は得られたかな？　さらばだ！」

「そろそろ時間よ。集まりなさい」

「攻略ですよ攻略だよ攻略だぞ攻略に行くぞっヒョォォ！！」

「……落ち着きなさい」