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そして俺は今、怪しさ満点の乗り物に揺られ、帰り道を辿っている。――翼の無い飛行機なんて、傍から見ているだけでも不安だというのに。
「約3ヶ月の冒険、お疲れ様でした。ノービスにしてはよくやった方じゃないですか?」
「さあな。どっちにしろ暫く厄介事に関わるのは御免だ。何か今まで溜めてた疲れがどっと出た感じだわ……」
職業――と言えるかどうかはさておき――柄、人の死は結構な数を見てきたつもりだったが、死体が動くのを見るのは今回が初めてだ。他にも受け入れ難い多く事実を、俺はこの世界で垣間見た。カモノハシとやらはなかなか可愛かったと思うが。
もう少し若ければ順応もできたのかもしれないが、今の俺は歳をとり過ぎていた。戦いの高揚感は悪くなかったが、今の肉体・精神でこれをずっと続けるのは少々酷な話だ。
「しかし、あんたが送ってくれて助かったぜ。俺一人じゃ帰り道も分からなかったからなあ」
「いえいえ。こちらこそあなたにはお礼を言わなければなりません。あなたを辿って、この『世界』を見つけることができたのですから。この世界のコンファインという技術、我々にとっても興味深いものなのでね」
……まあ、こいつもこいつでわけの分からない存在ではあるが、前述の通りこれ以上他の世界に関わるつもりは俺には無い。一般人として生き、そして死ぬ。これが俺の矜持が出した答えだ。
「ふぅ。さて、無事に家に帰ったら、近所の銭湯でひとっ風呂浴びて……」
ついでに、足も洗っとくか。
いい加減、濁った水に棲むのも辛くなってきた頃合いだ。 |
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