69日目 - 新暦591年 3月末
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　わたしが彼を最後に見たのは、三年ほど前の話だ。
　
　あの頃もいつも不機嫌そうな顔をして、けれど今よりはすさんだ目をしていなかった――いや、いつからかすさんだ目をするようになっていた。彼とはまったく逆の性格をした友人を、とある作戦で亡くしてからだ。
　
　わたしは、彼はそういったことには慣れているものだと思っていた。自分から話しかけることなどしなかったから、彼とその友人がどれくらい親しかったかとか、その作戦で具体的に何があったのかは判らないけれど。
　
　
　そしてひとつ、わたしは彼に訊きたいことがあった。
　

　
　吸っていた煙草の火を消して、なかなか話しかけられずに居たわたしに近付く。
　

　
　まだ辺りに残っている煙草の煙が、すこし煙たい。何度か咳き込むわたしを見て、彼はひとつため息をついた。
　

　
　満ち足りた顔。……あなたの考えそうなことは、何となく分かる。
　
　囁きで十分だという彼の言葉に甘えて、囁きでお礼を言ってからその場を去ろうとした。
　――が、物陰で様子を見ていたらしいロウと目が合った。
　

　

　

　
　ロウが微笑む。わたしはそれを、どんな顔で見つめていたんだろう。
　
　わたしを信じたその気持ちは、いま、どこに在るのだろう。
　

　
　ふと、ロウとシェリィが話していたことを思い出した。
　
　それなら、わたしの記憶の中に居るあなたは、きっと微笑んでくれるはずだ。

　
　あなたの居ない世界で、ちゃんと笑えたことを。
　

（語られた話に聞き入ってからふふっと楽しげに笑う）

（その後でずれについて）

（仮定の話とその答え、エルの方から伝わる情報にも耳を傾けつつ）

（投げかけた恐らくとても大切な問いかけ。相手が直ぐに答えない様子と続く言葉に聞き入ってから）

（どこかしょんぼりした様子の２人を見て、にっと笑うと両方の頭をぽんぽん、と軽く叩き）

（迎えだという男性に見えない角度にさりげなく移動してから、荷物をあけてそこから１冊のノートを取り出す。それをエルの鞄か何かに仕舞うように仕草で伝えてから）

（続く言葉には嬉しそうに笑いつつ）

（届いた少女の声。そして以前よりずっとはっきりと搾り出された声に。何時もと少し違う満面の笑みで、エルの頭をもう１度くしゃりと撫でた）

（３人の重ねられた手。そう、そこにも確かに何かの“答え”があったのだ――）