悪魔と天使は消えて、そうして人間ばかりが後に残った。



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控えめな物音。机と水差しの立てる。
水音……、コップに水の注がれる。

ややあって、ためらいがちに、カミユが再び口を開いた。

しばしの沈黙。菫色の瞳が瞬く。

そこまで言って、耐えきれず、涙が落ちる。
カミユとて、目の前の人の視線の動きや言動から、
何かを察せられないほど、愚鈍ではなかったから。

顔を伏せる――床に膝をつき、未だグレイマンの身体を覆うシーツの上に。
シーツを掴むその指先が、肩が、背が、震えている。
嗚咽。抑えきれず漏れて、――暫しの間、続いた。
そうして。

ただ、その名が呼ばれた。震える声で、祈りのように。

窓から西日が射していた。
部屋の中は、夕日の色に染まっている――
マァムブが覚醒したその時と同じ、燃えるような黄金の色だった。

斜めに走る光の中で、埃が舞う。金色の粒子になって。
細く開けられた窓から、わずか、ゆるやかな風が流れてくる……、

光があった。ただ、それだけが。

　　影が薄れいく

ゆら　と　ゆれる黒い煙。