壇上の村長の号令に合わせ、村の広場に集った村民たちが虹色天幕万歳と繰り返す。
虹色天幕の御使いとしてこの世界に降り立って以来、何度この光景を見せられたことだろう。
半ばうんざりしながら絃繰緑こと雑草王女は巨大な歩行雑草の掌から熱狂する村民たちを見下ろしていた。
集まる村民は次第に増えているが、今日はひときわ多い。

　今やコガネ村は周囲の村々を併合し、
雑草王女ら虹色天幕一行がメルンテーゼに来た頃とは比較にならない規模となっている。
次々に新王の配下を血祭りに上げていく雑草王女らの武力を背景とした成り上がり。
そしてとうとう、王を、一対一で葬り、雑草王女が凱旋。
実のところ荒野に魔神が手ぐすね引いて待ち構えているのだが、
実在するかどうかもよくわからない魔神を倒したかどうかなどはさして問題ではない。
緑らも「新王を倒したら魔人が出て来てその後前王が出て来たが全部倒した」
などという説明はせず、村民らには「王を倒して来た」とだけ伝えた。

　先程までの熱狂が打って変わって、耳が痛いくらいの静寂。
村長の指導の賜物か、いや、王を倒したという逸話に十分な説得力を持たせる雑草王女の威容ゆえだろう。
緑の合図で巨大歩行雑草に掌をやや広げさせ、緑が静かに、だがよく通る声で言った。

　村民らが俄かにざわつき始めたが、
我関せずとばかりに歩行雑草はズシンズシンと足音を響かせながら
歩いて行ってしまった・・・


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