暗夜の森の戦いから数日。

シュウスケは異世界間移動用バイク『マシンフェアリーソーン』の簡単な点検を終え、街から少し離れた草原で異世界移動の準備を進めていた。


…先日の戦闘。　妖精達との絆の力と『トリニティバックル』を用い、フィリアステンペストフォームへと変身したシュウスケは、襲撃のため集まってきたローバルを一掃した。　

その後しばらく、新たな増援を警戒していたが…とうとう、ローバル達は姿を現さなかった。

赤髪に紫の角。　シュウスケの心の一部を操り、本来のローバルの姿を現させた、「心」を司る妖精。

戦闘を終え、しばらくしたある日、彼女は再びシュウスケの前に姿を現したのだ。


彼女は、自身がローバルと知ってもなお妖精達のために戦うシュウスケと、同じくシュウスケのために力を貸す妖精達の姿を見ていた。

そして、彼がローバルであっても敵ではない事を知り、どうしても謝りたかったのだという。
同時に、シュウスケ達の近くまでダークフェアリーが近づいていた事にも気づき、シュウスケ達に伝えに来たのだ。

フィリアスが驚くのも無理は無い。

メルンテーゼに来たばかりの頃から交友のあった三人…彼女達が、ルタの探していた子どもたちだったのだから

混乱しているフィリアスの横で、異空間へつながるゲートが開く。

シュウスケはマシンフェアリーソーンに乗り、走り出す。

離ればなれになっても、決して絶える事のない妖精達との…仲間との絆。

一揆の中で出会った戦友たちの記憶を胸に刻み。

『マスカレイダーフェアリー』は、新たな世界へと走り出した。

アメニアは、大妖精の研究室を後にする。

…薄暗い部屋に、大妖精1人が残された。

膝から崩れるように、その場にへたり込む大妖精。


その足元に、かなり昔の物であろうボロボロの設計図がひらりと落ちる。


――『ProjectATS:Arms-Transfer-System_00』と書かれたその紙の隅に、大妖精の頬を伝う雫が落ちて行った。

両手を組んで放たれる二重螺旋のビーム。
最大出力で放たれる、腰のボウガン。
DFDの格子部分を展開して、炉心から直接放たれるエネルギー砲。
それらの一斉射撃を以って、サイネルの周りにいるローバルの郡は全滅。

それは新たな力を得たシュウスケが、丁度戦い終えた頃のことだった。

蒸気を上げて放熱しながら、シュウスケに向けてサムズアップをする。

仮面を閉じて完全に排熱した後、変身を解いた。

決戦の翌日―

朝日が昇る頃、脱いだジャケットを肩に背負い、珍しく煙草を、しかし火をつけてないそれを咥えながら
エリオットと共に歩いてくる。

煙草を咥え直し、頭を掻きながら大きく、しかし満足げに息を吐き出す。

そういうと、握った拳を胸に当ててくる。

それだけ言うと手を挙げて歩いていく。その様子を見てエリオットは大きく溜息を吐き。

表情を持たないロボットの声は、どこか嬉しそうで。

穏やかな光を浮かべる、紫色の宝玉。
エシャロットはそれを差し出されると、何の疑いもなく受け取った。

リータは、その宝玉の禍々しい気配を感じ取っていた。
それはエシャロットにも感じ取れているはず、なのに…。

今にはじまったことでもないと思いつつも…
それを渡してきたシュウスケを見る。

不思議なものである。
邪悪と見ればすぐにでも手をかけていたはずなのに、この世界にきて、エシャロットと出会ってから、ずいぶんと変わったものだ。

・・・

そうして、お別れの挨拶を済ませていきながら…

最後に、今まで見せたことのない、穏やかながらも、どこか真面目な表情を見せて…
三人はふわりと浮き上がり、空高く舞い上がった。
世界を救い、新しい世界を創生するために…。

いつまでも、ずーっと妖精さんと仲良くですの！　またですのー！