そこら中の喧騒も大分静かになった頃、彼女は荷造りを始めていた。

ここはタンポポ荘のお借りしていた部屋である。
窓際にはマキリが空を見ており、らすぬこは彼に話しかけている。

そう、そもそもの彼女の目的はネクターの調査である。
最初は圧倒的に数が少なくデーターを取るのには難航した。だがあそこにあるネクターを使えば様々な実験が行える。
そして、その実験も終わり彼女の旅も終わろうとしていた。

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マキリには思う所があった。
マキリはこれまでクソみたいな世界でクソみたいな生き方をしてきたと自分で思っている。
だからこそこの世界が新鮮でこの世界で会う人々が眩しく見えた。

これまで打算的な考えでしか女性と触れ合わず、またそうで無い場合も快楽の為だけに関わりを持ってきた。
男と女なんてそんなものなんだろうと、疑うことすらせず。マキリは過ごしてきた。

だがマキリの心情を変えたのはひとつのナンパ。

相手はまるで何もわかっていない。世間知らずとかそういう問題じゃない相手。
最初は下心だった。照れる顔が好きだった。次第に好きという気持ちは次第にエスカレートしていった。
マキリにとっては恋というものは初めてなのかもしれない。
相手を好きになる気持ちと汚れた自分という存在。純粋すぎる彼女と自分は一緒にいてはいけないだろうか？

そんな中自身が放っておくといずれは死ぬという事に気がつく。
笑った彼女が見たいと、生きたいという気持ち、このまま死ぬほうが彼女の為になるのではないかという気持ち。
結局はそのどちらも彼は選べなくて、生きたいという気持ちが延命の準備こそしたが気付かれずこのまま死ぬことを良しと考えた。


自分は彼女に好かれなくていい。ただ、自分と関る事無く、笑顔を振りまいていてくれればそれでいい。



それでいいと、彼は思った。が、結果として自分は仮死状態から戻りここにいる。
そして、元の世界に戻るという事は彼女とは二度と会えなくなると言うことである。


なんと言葉をすればいいのだろうか？


なんと.....

「な？」の言葉と一緒にマキリの尻に蹴りが入る。が、マキリはどこか吹っ切れたようだ。

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