ﾌﾞｰｰｰｰﾝﾌﾞﾌﾞﾌﾞﾌﾞﾌﾞﾌﾞｰｰｰｰｰｰｰﾝﾌﾞｵｰｰｰｰｰｰﾝﾌﾞｰｰｰｰｰﾝ

飛んでった…
ブランチマンから逃げるように　飛んでった…　遠っ…

（――最初で最後の一日を過ごした後。
二人が待つ宿へと戻れば、部屋の前に人の気配を感じ忍の足が一瞬止まる。
…が、すぐにそれは見知ったものだと気付くと、また歩を進め――
戸の前に立つ、小柄な人影へと声を掛けた）

（頭を下げる少年の唇が、『おかえりなさい』と動くのが見て取れた。
その言葉に応えながら、個人的な我儘を何も聞かず通してくれた事への感謝の念を込めて、こちらも目礼で返す）

（何やら緊張した面持ちでこちらを見上げ…けれど伝えようとする言葉は、声は、
いつかの日に失ったまま上手く形にはならず。
やがてこれでは埒が明かぬと諦めたのか、筆談に切り替えたようだ。
柔らかに紙を滑る筆先を、黙って見守る）

『　広庭　に　いきませんか？　』

『　すみません、気掛かりなんです。

あの人が　まだ、あの庭に　いるのか

今も、守り続けているのか　』　――――

（“広庭のあの人”と言えば、思い当たる人物は唯一人。
あれはまだ、一揆に参加して一週間も経たぬ頃だったろうか。
ようやっと武器を振るう事に慣れだした少年が、早々に味わわされた大きな挫折）

（一言静かにそう呟くと、顔を上げる。
そして忍は、真っ直ぐ少年の顔をみつめ頷いた）

セ　ン　タ　ー　奪　っ　て　こ　い　（　使　命　感　）

…龍貴は、オーバーオール一丁の庭師と再び向かい合った。