グノウと迦楼羅とは、また別行動だ。
私が、自分だけでも街へ行きたいと言ったから。

数日前には10年の付き合いだったエンブリオのエリィともお別れしたし、今はもう本当に一人だ。
...とはいえ、エリィはずっと住んでいたネクターの花畑だったところに戻っただけだし、私も一揆が終わったら一旦花畑に帰るつもりなんだけれど。


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二人と別れた後、メープルは木陰に座り、手持ちのネクターをぼんやりと眺めていた。
この前すべて散ってしまっていたはずの花びらは、もう元通りの6枚になっている。

この赤い花が好きだ、と8年前、メルンテーゼで初めてできた友達がメープルに言った。

明るく社交的な彼は、どういうわけか当時人見知りだったメープルをえらく気に入り、どうにかして仲良くなろうとあらゆる手を尽くしたのだった。
かけっこしようと誘っては無視され、お話ししようと隣に座れば逃げられて。
どうしたものかとそこいらに咲き誇るネクターを触っていると、ようやく花を心配したメープルが近付いてきてくれたのだった。
「この赤い花、綺麗だね。俺の世界では、こんな花見たことないや。」
彼がそんなことを言うと、メープルはえっ、と目を丸くした。
彼が自分と同じくらいの年齢で、自分と同じ、他の世界からやって来た人物だったからだ。
そこで妙な親近感が湧き、彼の話を聞いてみたい、そう思って、メープルは勇気を振り絞って彼に話しかけたのだった。

それから1年間、彼とメープルはすっかり仲良くなって一緒にネクターの花畑で暮らしていたが、ある日、彼がまた他の世界に旅立つと言った。
「俺は旅人だから、同じところにずっと住みつづけるわけにはいかないんだよ。」
旅をするには心もとないほど少ない荷物を小さな鞄に詰め込みながら彼はそう言う。
「じゃあ、またここで会おうよ、ジャック。」
メープルは食料の入った大きな鞄を彼に差し出すと、そう言った。

持ち直した槍を肩に担ぎ、すぐにでも歩きだせるようにする。