(※引き続き番外編という名の本編。
　 前回からの続きです。
　 最近花粉がきつくてしょうがない。
　 ぴきー！)

「こんな時……
　どういう顔をしていいのか分からないわ。」
睦美さんも真白さんもどう対応して、
どう反応していいのかわからないのだろう。
沈黙が流れる中、
私は率直に答える事にした。
正直これ以上の沈黙には
さすがにいたたまれなくなったというのもあるし、
それ以上に、
私が何かいわないとはじまらないというか。
「え、あ、え……！？
　違うよ！
　いや、違わないけど違うよ！
　そういう意味じゃ、
　あれ、でも、えっとその……！」
途端、あわてだす咲良さん。
自分が何をいったのか気づいたのだろう。
それはそれでいいのだけど、
否定すればいいのに、
否定しきれない辺りどういう事なのか。
まぁ、本人としても、
いまだ自分の気持ちが定かではないのだろう。
それが恋心なのか、
それともただ友人としてなのか。
少なくとも、
咲良さんに友人はいても、
ここまで近しくなった人物は、
親以外だと私達くらいなのは確かなのだと思う。
まぁ、それはそれとして……
「まぁ、私としては、
　別にやぶさかでもないし、
　しっかりとしたものならちゃんと受け止めて考えるけど、
　とりあえず、
　今回はどういう意図なのかはっきりさせた方がいいわ。」
「やぶさかじゃないのかよ！」
「別段女性同士の愛情っていうのも、
　経験上珍しいものでもないし、
　一応ノーマルのつもりだけど、
　そもそも、
　どちらかというと私は、
　相手に求めてるのは一緒にいて幸せかどうかだもの。
　それが満たされるなら別に？」
「そもそも子供うめるかどうかも問題ありますしね、
　魅月さんは。。。」
「ま、ともあれ、
　本気でそっちの告白なら考えるけど、
　今回は単純にまだまだ一緒にいたいくらいの意味……
　で、いいのよね？
　ちょっと自信ないんだけど。」
ともあれ、はっきりさせよう。
決して断じて愛の告白ではない、
はずだと思う。
多分。
正直時間が過ぎる度に自信はゆらぐが。
「え、あ、はい！
　そうです。
　そのちょっと……
　私もノーマルだと思いうし、
　少なくとも今、
　愛してるだとかそういう意味での告白は早いというか、
　そういう気持ちではないと思うというか……
　えっと、その……
　流される自分が嫌で、
　魅月と一緒にいたら変われる気がするの。」
うん。
どうやら少なくとも今のところは、
それ以上のものはないようで何より。
さすがにその気がない純真な子を、
そっちにこんな短期間で引きずり込んだとか、
流石に私でもちょっと申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「成る程ね。
　とりあえず、
　貴女の愛の告白は私の脳内メモリーに保管しておくわ。
　折角だもの。」
「忘れてあげろぉ！」
まぁ、でも折角のネタだし、
からかい道具というか、
からかう種に脳内にストックしておく。
睦美さんがそれを止めようとするけど、
残念、
ストックされたものは消されないわ。
「その顔は忘れてくれない顔……！」
「諦めましょう、
　咲良さん。
　さすがにもう取り返しが……」
「うう……
　自爆だから文句はいえない……」
さて、それにしても、
どれほど永くの付き合いになるのかしらね？
出来うるなら、死が私達を分かつまで、
それほどに永い時の付き合いにはなって欲しいものだけど。
――気づかぬうちに、
そんな願いを脳裏に描いた時、
私は確かに笑っていた。

――それから数年後。
私達は卒業し、
離れ離れになった。
とはいえ、真白さんとは枝がある以上、
一心同体というか、
なんだかんだでずっと一緒の感覚があるけど。
とはいえ……
「……！」
やっぱり距離が遠すぎると感度が悪くて、
連絡がとれなかったり、
姿を出したり出来ない辺り、
面白いと思う。
今も何か真白さんが喋っているようだが、
全く聞き取れない。
こちらからの言葉も同じだろう。
ま、それでも、
お陰で大分楽しくなったのは確かではある。
やっぱり近しい親友が傍にいてくれる心強さは変え難い。
最も――
真白さんと同じような友であれば、
何名か既にいる訳だけど。
まぁ、これ以上増えない方がいいのかもしれないが、
私が生きていく上で多分増えるとは思う。
というのも、
何だかんだで気に入られた場合、
死して尚とかよくある話ではあるから。
さて、一体どれくらい増えるのかしらね。
そんな事を考えていると、
不意にスマホから着信のメロディが流れてきた。
すかさず誰からなのか確認もせずに呼び出しに応じ――
「――現在、この電話からはご利用いただけません。
　電話番号を確認の上、間違いがないかご確認下さい。
　或いは、全裸待機の上、
　３年程石の上で正座して下さる様お願いします。」
「おい、コラ。
　何ふざけてやがる。
　その声はどう聞いても魅月だし、
　普通に問題なく通じてるだろうが。
　まぁ、いいや。
　とりあえず、
　そちらの状況聞きたいんだけど。
　妙な音がしないって事は、
　特に問題は起こってないと思いたいけど、
　実際の所どーなってる？」
とりあえず居留守を使ってみたのだけど、
残念ながら通じなかった。
まぁ、これで通じてしまったら、
正直どうかしてると心配するレベルではあるが。
幸いにも仲のよい睦美さんが相手だったようで、
特に問題はなく、
普通に話を進めてきた。
どうでもいいけど、
最近、
睦美さんは私の連絡役として働き過ぎじゃないだろうか。
「特に問題なし、ね。
　雑用も終わったし、
　甘味店に行く予定だけど、
　もちろんくるでしょ？」
「なんだ、終わった後か。
　そうだね。
　それなら他の人員に連絡いれて、
　後片付けお願いしたら合流しにいくよ。
　しかし、あれだね。
　思ったよりやる事やってるよな。
　魅月。
　私も頑張ってるんだけど、
　まだまだ未熟なのかねぇ。
　なぜか待機組にさせられる事が多いんだけど。」
「ああ、それね。
　未熟なんじゃなくて、
　私との連絡役として最適だからだと思うわよ。
　だから本当に大切な時以外は待機させてるんだと思う。
　ぶっちゃけた話、
　貴女が出る時って割と危険なものが多いわよ？
　といっても最近の話だけど。
　それにしても……
　その喋り方で怒られないの？」
「あんたとの連絡以外の仕事中ではきっちりしてるっての。
　というか、
　この喋り方はあんたや親しい友人と喋る時だけだってば。
　それにあの時より女らしく喋ってると思うんだけど。
　さらに言えば、
　事務的な喋り方とか違和感凄いからやめてっていったのは、
　あんたからだったと思うんだけど。」
「その通りよ。」
「……。」
「……どうかしたかしら？」
「言いようのない怒りを感じたけど、
　いつもの事だからすぐに呆れに変わっただけだよ。
　ま、じゃあ、合流したら、
　今回の件について詳しい話聞かせてもらうとしようか。
　ちゃんと報告書にまとめないといけないしね。
　それじゃ、待ち合わせ場所はメールで送るよ。」
そういって睦美さんからの電話が途絶え、
メールが送られてくる。
添付されていた地図を見ると、
直接店で集合という事らしい。
……
絶対にどのお店のスイーツが食べたいとか、
チェックしてたわね。
まぁ、手間が省けて良いけど。
「さてと、
　となるともう少し感度がよさそうな場所に移動できたら、
　真白さんも呼ばないといけないわね。
　とりあえず待ち合わせ場所の方へ急ぐとしましょうか。」
スマホを仕舞い、
移動を開始する。
程なく歩いた所で……
ドンっという音と共に、
勢いよく私は誰かに後ろから抱きしめられていた。
どうやら私が電話をおえるタイミングをはかっていたらしい。
律儀というかなんというか――
「……それで、何かいいわけはあるかしら？」
「ふぇっ！？
　言い訳ってそんな！
　今がチャンスって思って……！」
「――なんていうか、
　仕事についてからスキンシップが激しいというか、
　アタックが凄くなってる気がするんだけど。
　いい男性とかいないの？」
「うう……
　男の人はちょっと怖くて……
　こんな事は魅月くらいにしかできないよ……」
全くもう、と、
後ろから襲撃をしかけてきた咲良さんを引き剥がし、
軽くデコピンをする。
私のいない所では、
クールな感じらしいのだが、
正直な話、
普段の私に対する彼女を見ている限り、
想像はできるけれど、
正直ないわねと思ってしまう。
全く誰のせいかというと、
どう考えても私のせいに落ち着きそうなので、
その辺りは諦める事にする。
「残念ね。
　まぁ、良いけど。
　貴女の好きにするのが一番だろうし。
　それで……
　貴女もいくでしょ？
　一緒に。
　４人でゆっくり遊びましょ。
　どうせこの後私もやる事ないし、
　私の傍で私を監視するのも立派なお仕事だもの。
　問題ないと思うわよ？」
「もちろん、一緒するよ。
　私達の仲だしね。
　ええと、その前にこちらの用件だけすませたいけど、
　構わないよね？
　やる事終わらせた方がゆっくりできるし。」
「確かにその通りね。
　それで、用件って？」
「そんなに構える事じゃないけどね。
　今回の件の報告……は
　後でゆっくりする事になりそうだからおいといて――
　魅月宛に書類。
　そろそろ次の行き先について考えないといけない時期でしょ？
　候補をいくつか用意したから選んで欲しいってさ。」
「ああ、成る程、
　そういえば新しい学校に行く頃合ね。」
「ま、
　どこにいこうと私も睦美さんもついていくけど。
　親しい人間が傍にいるとこちらとしても、
　魅月にとってもやりやすいでしょ？」
「当然ね。
　むしろこないとか言われても困るわ。
　私に友好的な人ばかりじゃないのだもの。」
歩きながらはよくないのだけど、
賞味私が見ていなくても周囲の様子は手に取るように分かるので、
気にせず歩きながら書類に目を通す。
色々候補があって目移りするが、
そのうちのいくつかはもう既に所属した事のある所である辺り、
私もいろんな学校に所属したものだと実感させられる。
ともあれ、
私の身体が一つである以上、
一つの場所を選ばなければならない。
普通であれば慎重に選ばなければならないのだろうが……
「――私が適当に書類選んでシャッフルして、
　適当なのを咲良さんが選ぶってのはどうかしら？」
「いや、流石にそれはどうかと思う。
　魅月が気に入ったところじゃないと後で後悔するよ？
　適当に選んでも良いけど、
　私的にはやっぱり楽しく過ごしてもらいたいし。」
「仕方ないわね。
　……真白さん聞こえる？
　聞こえたら現れて選んでくれないかしら？」
最初にいた場所からさほど離れてはいないが、
そう枝に向かって声をかけると姿をあらわした辺り、
ぎりぎり交信できる範囲に入ったのだろう。
なんと都合のいいとも思うが、
まぁ、
寧ろ交信が届かない場所の方が
特殊な場所でもない限り少ないくらいなので、
さもありなんといったところか。
「咲良さんの言うとおり、
　魅月さんが自分で選んだ方がいいと思いますよ？」
「……
　私の味方はいないのかしらね。」
「いやいやいや！
　寧ろ味方だからですよ！
　ですよね。咲良さん。」
「そ、そうだよ！
　味方だからだよ！」
「それなら仕方ないわね。
　真剣に選びましょうか。
　……あら？」
「……？
　どうかしたの？」
「いえ、面白いものを見つけてね。
　ふふ。
　まぁ大した事ではないのだけど、
　細かい話は皆揃ってからにしましょうか。」
書類を見ながら一つの書類を残して残りを咲良さんへとつき返す。
一体私が何を思ったのかは大した話ではない。
単純に懐かしい名前をみつけて、
懐かしい気分になったから会いにいこうと思っただけである。
どんな思い出があったかを語るのもまた面白いだろう。
丁度話のネタにもなるし、
悪くない選択である。
しかし、それにしても――
「……私達四人がこうして卒業後も仲良くできるなんて思わなかったわね。
　割と目指すのはいいけど、
　実現するのは難しいと思ってたのだけど。」
クスリと笑う。
真白さんはともかく、
咲良さんにしろ睦美さんにしろ、
目指すのと実現するのは違う。
本当によく実現できたものだと思う。
「頑張ったからね。
　睦美さんはちょっと心配だったけど。
　成績あそこからあげるの大変だったろうなって。」
「ああ、その辺りはもうどうしょうもないわね……」
「わ、私は信じてましたよ！
　お二人が夢をかなえるって！」
「うん。真白さんは偉いわね。
　きっちり最後まで信じたのだもの。
　ま、積もる話は後にして急ぎましょ。」
全く、こんな幸せがあるなんて、
ほんと想像していなかったわ。
ありがとう。
私とこうして共に在る事に感謝を――