無事に勝つことはできた、が・・・。
この感じ、相手はどうやら最初から全力で戦う気はなかったようだ。
どうにもイライラするが、一応勝ちは勝ちだ。

ところが黒白の二人はアラヤたちをそっちのけで、あれこれ言い合っている。
いわゆる『イチャつく』というやつだ。
自分たちの世界に没頭してる二人を、道を聞きそびれたソウハがイライラした様子で睨みつけている。珍しい。

しかしそんなことは気にせず、黒白の男女はさっさと先に歩き出してしまった。
これにはさすがにソウハもキレるかなと珍しいもの見たさに少し期待してみたが、ソウハの対応は意外と大人だった。イライラした様子は隠せていなかったが。

慌てて二人に追いついたソウハはいくつか言葉を交わしている。
一通り話し終わったのか、ソウハが周囲を見渡している間に男女二人は階段をどんどん上がっていって見えなくなってしまった。
しかしソウハはそのことに気づいていなかったようで、二人がさっきまで居た場所に振り返り、誰も居ない場所に話しかけていた。

アラヤたちはなんとも言えない沈黙の中、階段をのぼっていくと分岐路にたどり着いた。
立て札によると片方は砂地、もう片方は草原へと続いているようだった。

以前の砂地でのことを考えていると、ソウハは『砂地に用はないから草原にしようそうしよう。』と早口でまくしたて、確認をとってきた。
あえて面倒な方を選ぶ必要もないのでアラヤは素直に頷く。
そういうわけでアラヤたちの次の行き先は草原に決まった。

*----*----*

どこまでも広がる草原の中、唐突にソウハがキャンプ宣言をした。
まだ日も高く、普段ならまだ移動している時間である。
しかしここのところ無理して移動いたこともあったので、ゆっくり休むというのも悪くない。
アラヤたちは早々に野営の準備を済ませると、ゆっくりと休息をとることにした。

しばらく荷物の整理なんかをして過ごしていると、焚き火の方から小さな寝息が聞こえてきた。
視線を向けてみると、ソウハが座ったまま眠っていた。
背中の大きく開いたその服装を見ていると少しだけ心配になった。
何がというわけではないが。
とりあえず自分の空間ポケットから外套を引っ張り出す。
村を出たときに顔を見られないようにするために使ったものだ。

汚れなどがないことを確認し、外套をソウハにかける。

ソウハはしばらく起きそうもないので、ソウハのために食事を作ることにした。
とはいえ食料が豊富にあるわけではない。

などと考えながら料理を始めるのだった。

*----*----*----*

ちょうどシチューが出来上がった頃、ソウハがもぞもぞ起きてきた。
ソウハは自分にかけられた外套に気がつくと、お礼を言ってきた。
目が覚める前に回収しておけばよかった・・・。

言いかけたところで物音に気がつき言葉を切る。
ソウハも気がついたようで、その顔には緊張がうかがえる。
探知の術式を強めると、すぐ近くにいくつかの生物反応と術式反応があった。

いくらこちらの目を欺く術を使われていたといっても、こんなに近づかれるまで気づかないなんてとんだ失態だ。
術式を展開し、現れた魔物たちに戦闘態勢をとる。

しかし魔物たちの狙いはまた食べ物のようだ・・・なんでこんな・・・。
それに気づいたソウハは、魔物たちにシチューを渡さない宣言をすると戦闘を始めるのだった。