地下牢にはアンデッドのエンブリオが待ち構えていた。禍々しい魔闘気のただなかに三面六臂の骸骨がシュガーと相向かい合う。そのアンデッドは一揆衆からはノーライフキング、不死者の王など呼ばれていた。シュガーは腕組みの体勢で不死王を睨め上げ、不死王はその視線を真っ向から受け止めて睥睨する。シュガーは思う。骸骨とはいえ威風堂々とした佇まいは、確かに王と呼ぶに相応しい。

脱獄を果たしたいシュガーと看守の役割を担う不死王との間に戦いが起ることが必然であった。不死王が杖を掲げて何事かの術式を履行すると、暗く淡いオーラが立ち上り、地面から従僕のリッチが続々と召還される。シュガーはにやと笑みと怨霊の雷でもって返礼し、怨霊の雷がたちまちリッチの一群を黒こげに焼き払ってしまう。

不死王はリッチは次々と召還してその陣容は容易には崩れない。リッチが落雷によって黒こげにされる度に不死王は再度リッチの召還を繰り返す。リッチ達は苦悶の表情を浮かべてシュガーに警告を発する。早く逃げろと。彼らは不死王にその亡骸を支配されているものの、その魂は人であったころのままなのだ。リッチたちがシュガーに群がり、不死王が錫杖を掲げると魔弾がシュガーに襲いかかる。

しかし、シュガーは余裕の表情を崩さない。リッチを軽くいなし、魔弾はエンブリオによる障壁を展開して防御する。

シュガーの耳元に安徳帝の声が届く。

シュガーは両手を天地に構えて冥界と現世をつなぐ術式を履行する。何度となく王城の守護者を撃退してきたシュガーの必殺技であった。シュガーの背後に平家の怨霊の鬼火が立ち上り、シュガーの耳元に平家の戦場での名乗り声が聞こえてくる。シュガーの背後の空間が開け、現世と冥界が物理的に直結された。平家の声は地下牢の空気を振動させて聞こえはじめ、聞きなれぬ声にリンチ達が戸惑い始めた。空間から不穏な空気を帯びた黒雲が溢れだす。不穏な空気とは帯電のことであった。

天地の掲げられた両の手を重ねて前方に突き出すと、電撃が地下牢の端から端まで伝わり、リッチと不死王を黒焦げにしてしまう。シュガーは人差し指を掲げると、雲がシュガーの背後へと吸い寄せられていく。リッチも不死王ももはや蘇って動くことはない。彼らの魂は今まさに雲と共に冥界へと送られているのだからだ。雲が晴れ渡り地下牢を見渡せるようになると、シュガーの耳元に今日も今日とて冥府よりの声が届く。

シュガーの耳元で冥府のアドバタイズメント放送が流れてくる。しまらない結末ではあったが、かくしてシュガーは地下牢を突破し、一路王城内の調理場へと向かうことにした。

シュガーは怨霊と会話をしているようです

シュガーは怨霊と会話をしているようです…