――男は、その様子を俯瞰から眺めていた。

宇宙の中に浮かぶ半透明の球体、とでも言うのだろうか。
星の海を廻る天体。神の座から、ただただ、それが仕事であると言うかのように眺めていた。
少なくともそれを視界に映す男の胸裏には、感情の乱れはなく、かといって集中しているわけでもない。
男にとって、今代の魔王の行動はありきたりなものに過ぎなかったのだ。

発生自体はイレギュラーだったと言えるだろう。
通常、魔王は勇者にしか討たれない。そして、魔王は自身を討ったものに魔王の力を継承させる。
故に次代の魔王は元勇者であるのが当然で、他の誰かが介入する余地は本来、皆無である。
だから最初、彼女が魔王となった時は彼も驚きを隠せなかった。

観測を始めて億千年。何千何万と終末と創世を繰り返した中でも今まで一度としてなかった。
故に彼の期待は大きかった。
彼が目指すべき神の視点、神の思考に至るのに重要な事態が生じたのだと感じた。

まったく想定していなかったイレギュラー。
そう、男はそういった思考の埒外にあるものを求めていたと言っていい。
男にとって神は全知全能であり、思考の埒外などというものはありはしない。
予測を立てるまでもなく、神は全てを予め知っているというのが男の持論であった。
発生したイレギュラーを計測し、イレギュラーがもたらし広がる歪を観測し、その結末を推察し、最後に発生した全てを考察する。
そうする事で、それを繰り返すことで自分の思考は神に近づいていくのだと。男は考えていたし、その考えを信奉してすらいた。

しかし、そのイレギュラーたる魔王フィーグルの行動は神の思考を目指す彼の思考の範囲内に今、収まってしまっている。
平凡な動機、平凡な発火理由、殺戮の手段もプロセスもすべてが見飽きたもので、面白みはない。
無論、男とて発生がイレギュラーならばすべての行動が思考の埒外などと考えていたわけではないが、期待していただけに今の行動ははなはだ退屈だったのは確かだった。

ふう、と嘆息をついたその時になって後ろから誰かが覗き込んでいる事に気づき、反射的に振り返る。
神の座に入り込む事ができる者は現状3名。
神である男自身と、魔王である彼女と、もっとも神に近いもの。
男が焦がれ信奉するもの。

「……残念でしたね。期待通りじゃなくって」

それは、男の方を見向きもせずにそう言った。

「……いえ、まだ。まだこれからです。これからにこそ、私は着目している。
　むしろ、こんなどうでもいい段階で期待通りに想定外の行動を取られても困るというものです」

男はそう強がりを言う。
あるいは、見限られたくなくて見栄を張ったのかもしれない。
どちらにしても、それは素っ気なく「それもそうですね」と相槌を打って。

「しかし面白そうではありますね。それに、手際も良い。
　これなら退屈な時間もすぐに終わりそうだ」

そう、男に微笑みかける。

「ええ――楽しみです。彼女が再び私の前に現れる事が。どんな世界を望むのか」

男もそう言って微笑みかける。
彼にしては珍しい、本心からの笑みだった。
そう、楽しみだ。イレギュラーが発生するとそこだ。
いったい何を望むのか。何が起こるのか。どう転がるのか。
未開のジャングルを進む探検家の様に、男の胸には未知への期待が渦巻いていた。

「そうですね」

あるいは、男はそんな状態でなければ気づいていたのかもしれない。

「…僕もですよ」

それが浮かべる笑みの意味は、決して男と同じものではないという事に。

　万已楽はフィーグルとメリア鉱石の様子をじっと見つめる
エヴリーヌの魂の存続も関わっているのだ、楽観的には行けない

　メリア鉱石に潜む"星喰い"はまず上質な魔力が注がれてきたと喜んだが
すぐにそれは別のものだと気づいた
接触する魔術そのものを飲み込もうと足掻くが、所詮は中サイズのメリア鉱石に潜む"星喰い"である。強力な意志を持っている魔術を簡単には食べることは出来ず、少しずつ自らの糧として飲み込んでいくが、完全に飲み込み終わるまではもう少し時間が掛かりそうだ

　そういうと万已楽はブランクのメリア鉱石とエヴリーヌと"星喰い"の入ったメリア鉱石を近くに並べて次の作業を行いやすいようにする

どこぞの本の世界にはおとぎ話に出てくるような巨大な海産物があるらしいけれど。さぞ喰いごたえがありそうだった。

勝てずとも引き分けまで持ち込めればまだ逃げられるだろうから。
無論、言った通り人数自体は激減しているのだけど。

悪い人に仕方なく付き合っているような気がした。そういう人もいるのか。

　簡単に口には出来るがエンブリオに代わる何かを考えなければならない。
　新たな社会基盤を考えなければならないのでその苦労は考えの及びもつかない。

　自分の戦闘でなければそれなりに気が向くようである。

　これまで様々な案を出してみたものの、画期的となる様な物は思い付かない。
　長の役割の難しさにしみじみと嘆息するトカゲであった。

魔王って種族に脅威を抱いている。風を装っている。

魔王って種族がいるなら、勇者という種族もいると考えているらしい。

自分で手を下さない魔王は認められないらしい。

色々な勘違いは間違いと気付いたようだ。

少し投げやり気味に言い放った。

すでに手元のカメラは幻に置き換えられている。本物は懐の中だ！