見渡す限り続く、荒涼とした景色。
何もかもが砂塵と化した荒野が、眼前に広がっている。

木々が生い茂っていたであろうこの場所を、一瞬で灰燼に帰さしめた業火。
それはまさに、神の…　魔神の、力。


スチュアート君の話が確かならば、ネクターを創り出したのも その魔神だという。
エンブリオの力を緩和し、生命の搾取を抑える契約の紅い花…　ネクターを。


命あるものを喰らい尽くす存在、エンブリオ。それが跋扈していた世界。
…原初のメルンテーゼはこんな、命 枯れ果てた風景だったのだろうか？


そして…　私達が魔神を負かすことができなければ…




メルンテーゼは再び、こんな荒野に戻ってしまうのだろうか…？

身体が、震える。

これほどの力を持っている…　世界の創世を司ったともいえる魔神を、
私達で…　人の力で、どうにかできるとは到底思えなかった。けれど、それでは…

ふと感じる、掌のぬくもり。

見ると、先生が私の手を握っていた。繋いだ掌から伝わる、ほのかな温もり。
いつもと変わらない、お気楽な調子の声が続く。

肩をすくめながらも、晴れやかにこちらを見上げる。

飄々とした相棒に、微笑みを返す。

囃したてる先生を追いかけて、
真新しい灰の積もる荒野に 一歩、足跡を標した。