やーれやれ参ったね、皆だいじょぶー？

しかし新王…、何か色々やばいね。

…正直、ここまで来るとは思わなかった。
しかし後戻りする気は端から無い。よろしく頼む。

ん…、なんだ。

人間を、エンブリオに？それは…

それは、どういう経緯で譲り受けたんだ。
フライバイというのは…。一時期手配書が出ていた、
ミーニー・フライバイの事ではないのか？

…。人間をエンブリオに変える方法、か。
心当たりはなくもない。

ラージンの少数民族にイペ族という者がいる。
特殊な力を持っていて、生物を食べ望み通りの形に創り変える事が出来るらしい。

メルンストゥーラを束ねるグリゴリが、そうだと。
前に彼に仕えている者から聞いた。

ああ・・・成程。そういえば、そんな話もしていたわね。
そうね。逆説的に、人間が神ではないのはその点かもしれないわね。

個人的に、ではあるけれど。神はその振る舞いのどんな場合であろうと、嫌悪感を抱かないような気がしているわ。
まあ或いは、そんな感情が無いか、鋼鉄のような意志で制御しているのかも知れないけれど。

そう。その感情こそが、神と人間の線引きかもね、って事。

私が好きな言葉の一つに、”心を鬼にするのは心を神にするより容易い”ってのが有るけれど、そんな意味で”神”に到達できた人間は居るのかしらねぇ・・・。

そういえば、天蓋庭園の奥に現れたあの魔女も、一応神を名乗っていたかしらね。
まぁ・・・容赦は無くても感情ばりばりに有ったけれど。
もしその言葉通り、あれがこのメルンテーゼを拵えたってのなら、振る舞いだけは確かに神かも知れないわね。

ああ、そうそう。面白いこと、教えてあげるわ。
そのカミサマの仕業の序でなんだけれどね。

何を思ってか周囲一帯のネクターを焼いて更地に仕出かしたんだけれど・・・そのネクターが焼ける匂い、濃い、血のような匂いがしていたわ。
何を意味しているのかは、私では解らないけれど。

ふふ〜。平和な世の中になって、ビブちゃんとまったり過ごすの楽しみなんだ〜！

…その時までちゃんと我慢できるかなぁ…。いや、しなくちゃ…

………

び、びっくりした…可愛い子が怒ると迫力あるなぁ…

ビブリさんのいう事、確かにその通りだ。
俺はゴレムもリブリも利用して、こうして生き延びてる。

怒りの気持ちも…起こるだろうな…。恋人が利用されてるんだし。
でも、俺はこうしてリブリと恋人のビブリさんに情報を伝えることができて、満足だよ。
ある意味俺の役目は終わったから、今更俺はどうなってもいいって思ってるんだ。

俺が表れなくても、放って置いてもいずれリブリは研究所に連れ戻されることになってたんだ。
研究所が貴重な被験者をみすみす逃がすわけないだろ？
だからこうして一緒にいる。見えないかもしれないけど、一応俺もリブリを護衛してる…つもりだ。

リブリの親父さんは俺にとって恩人でな。恩人の息子なら護るのは当然さ。

それに、恋人がいなくなって悲しむ女の子を見たくないしな…

…愛されてるようで、幸せ者だなリブリは。
ビブリさんが受け入れるって言ってくれて安心した。

ビブリさんの愛情を信頼してバラすけど、単刀直入に言うとリブリは兵器だ。

…正確に言うと、兵力に利用するために作られた改造人間と言ったところか。
瀕死の少年を生かすためだけにウサギの生命力を入れたわけではなく、いずれ兵力として戦わせるために作られた…というわけだ。

こんな小さくて頭悪そうな子どもが兵器だなんて誰も思わないだろ？
これから先、研究所は第二第三のリブリを作っていくと思うぜ。子どもを使ってな。

狂った研究者の考えることは理解できないものだ…。
きっとこのリブリの研究結果が良ければ、今後リブリを量産して王国に生物兵器として売り込みにでも行くんじゃないかな。

量産型…リブリ？

………うー……

負けません！勝つまでは！！

切り抜けるッ！

じゃ、まぁ適当に。

光翳らす者に、熱き血潮の鉄槌を――

実技指導はなかなかやらないのだがね。

・・・・・・・ネクターよ、力を。