*SIDE*レイヤ

「私の名前はオルタンシア。魔王の僕にして見守りし魔女…ここまでは、だいたい貴方達の知っているオルタンシアと同じよ。」

いや、俺様は知らんが。

サクラもよくわからない顔をしているが、ユリシスという男とわかっているのか頷いている。

あと、ウサギ先生がなるほど、そうか。みたいなことを呟いているが。

絶対にわかっていない。間違いなく。


「ただ、私はあそこに居る魔王の僕ではなく、別の次元の魔王の僕なの。セツカが本来、この世界の人間ではないように。」

ふむ、セツカは元々別の世界の人間だったのか。
それは興味深いな…今度調べさせてもらおう。

「それが、何故この世界に？」

ユリシスが聞くと、オルタンシアは溜め息を吐きながら答えた。

「誰かが、この世界の魔王の封印にちょっかいをかけたみたいなのよ。それが、変な風に作用して、私の世界の魔王の結界にも影響が出たの。」

その結果、ここに居るオルタンシアの世界の魔王の結界と、そこにいる魔王オリフィアの封印とがごちゃっと混ざってしまったらしい。

なんというはた迷惑な奴がいたものだ。

…何故かオルタンシアからジト眼で見られている気がするが何故だろうか。

「それで、私は丁度転生の準備をしていたせいで転生を失敗して…記憶を失ったまま転生して色々あったようだけど。」

「どうして記憶を失ってしまって、転生も失敗したのに…その、セツカさんの背後霊みたいになってるんでしょうか？」

サクラが可愛らしく小首を傾げながら疑問をぶつける。

「少しの間、私の転生体…フィーが魂だけになって仮初の入れ物に入っていて、それをセツカが預かっていたのだけど。その間に、フィーがことあるごとにセツカに力を貸していたせいで、その力の奔流である私の１部ごとセツカと同化してしまったのよ。」

なるほど、そのものではなく力の１部か。

「で、本来ならそりゃもう、うっすらとしか意識がないのだけれど、そこの魔王オリフィアさんの力の余波で私の意識も強くなったのよ。
力の性質は同じだから。だから、今も力を中和してセツカの剣を届くようにしているのだけれど。そこの、深雪さんの力もほぼ同質のものだから魔王の攻撃を弾けているのよ。」

説明の最中にもびゅんびゅん魔王からの攻撃は飛んできているが二人のアホ毛がとー！とかほぁー！とか言いながら弾いている。騒がしい。

「なるほど…ならば、現状、魔王に対抗できるのはセツカしかいないと言う事か？」

「いえ、ない事はないわよ？」

そう言うオルタンシアの言葉に、俺様達は再び耳を傾けた。