「こういう機会があると、知らない料理のメニューがよく集まりますね」
「ラザラス、本当に料理好きだよねえ」
「はい」

　飾りつけを見てくれていた少女の言葉に、つい顔がほころぶ。
　調理ではなく、料理として誰かに振舞うことが、ここに来てから随分増えた。

「僕から見ても、盛り付け綺麗になってると思うよ。前は、フルーツこういう使い方しなかったよね」
「ありがとうございます。フィーさんのお墨付きなら、心強いです」
「僕もそんな詳しいわけじゃないってば。むしろ、僕だってレシピ増えたほうだもん」
「好みも得意分野も、ばらばらだからこそ、でしょうか」

　手元にあるレシピの8割は、結局今回は使わなかったが、メモとして大事にしまっておこうと思う。
　菓子の類を作る機会は、今後もっと増えそうな気がしている。そうなるときの為に、練習もしてみたい。

「これは、ラザラスのお菓子だよ。ラザラスが考えた、オリジナルのお菓子」
「作り方は、ほとんど、レシピどおりなんですが」
「それはそれ、これはこれ」

　そうして、鼻歌まじりに残りの材料を手に取る少女に、ほんのわずか首を傾げ、それでもすぐに笑みに変わった。

「今日は、豪華なデザートが出来そうですね」
「残ったりもしなさそうだけどね。これなんか、きっとマグが喜ぶよ」

　この少女は、自分を語らない。彼女『料理』も、本質は無口だ。
　ただ、少女が綺麗なものやかわいいもの、ひとがよろこぶものが好きなのだと、それだけは、見てとることができた。