城内にある塔を登って行く。
どこかへ続いているようだが、下からではわからない。
着くのがあまりきな臭い場所ではないことを祈るだけだ。

……曲がりなりにも一揆で進攻しているというのに、
そんなことを考えていられるのも、僕らが後方にいるからだろう。

こうしてゆっくりと敵を蹴散らし、屠り、殺戮を楽しみ、攻撃を楽しんでいられるのも
僕らが後方の比較的安全な地点に居るからなのだと思う。
一度地下牢へ潜った時、自らの生命を死守するのに必死で
余裕など欠片も無かったことからもそれは明白だ。

今だけの楽しみを大事にしていきたいと思う。


同時に、妙な感覚に捉われることもある。
虚無感だ。

その原因と思われる思考の内実は判りやすい。
僕の本来の価値観や感性は完全に死んでいて、今残っているのは機械的な殺戮の役割だけで、
それを覆い隠すために必死にその残骸を使って楽しみを見出そうとしているのではないか？
……というようなものだ。

ただし、仮にそうだったとしても、失った感性はすぐには取り戻せない。
現在手元にある価値観だけで生きていくしかない。
どちらにせよ『メヌエモヤール』の目的は変わらず、
誰にも知られずにひっそりと自分の生活を送りたいだけだ。