私にも、そんな選択肢があればよかったなぁ、なんて呟いて。
偽の指先と、絡まる蔦を見ていた。

モクの口の中は固く、口内はただその形をした木でしかなかった。
舌も、歯も、喉の奥も、何もかもがである。

モクはじっと、偽を見つめる。
どうやら似ているようで異なる存在である偽の事が気になっているようだ。

目をそらしている辺り、地震はあんまり無さそうです。

話題は変わって手元で焼かれているパンの方に。

表面はきれいなキツネ色。
香ばしい香りが漂います。

松を燃料に炙ったことでこのちくわに技術2が加味されたとかされなかったとか

　さらに加えるなら偏りもだろう。常識的なものを知らない場合も多々ある。

　彼女の知識はおそらくこれ迄の旅の経験に基づくものが多いと思うが、あるいはと考える。

　といっても各世界を巡回しながらの作業となる事は明白なので、実践は困難だろうが、やってみたい実験である。

ウザい喋り方のきりっとしたうなぎを想像するが、何が可愛いのかは残念ながら、微塵も理解できなかった。

　ぴり、と。

　渇いた空気が、何か、震えのようなものを孕んで、
　硬い掌は逆らうことなく、そのすべらかな指に囚われた。

　口が動く。
　躊躇いを示してか、声は掠れる。

「……おまえに」

　おまえにそれが、成し遂げ得るものかね。
　繰り返しの反駁は既に震えて、途中、違う、気付いたように首を振って自ら否定した。
　違うのだと。
　そうではない、と。

「違う。……成し遂げ得るか、でなくて――そうだ。
　お前にはその、故がなかろう」

　故。
　愛するゆえ。
　手を伸べるゆえ。
　掬い上げるゆえ。

　このような化け物を、なにもかも、受け容れるゆえがなかろうと。
　否定に躍起を含んで、それでも掌を振り解くことはしなかった。

私達図を見た後の偽の表情を見て、少し肩をすくめて笑う。