以前、千巌がいったことば。
「どんなときでもあきらめなければ、何とかなるもんなんだって」
　底抜けポシティブの千巌は、シンプルにそう思ってそういっているんだろう。
　あんまり難しいこと考えないし、察してもいないし。

　もちろん、あきめたくはない。
　だからあがいて、願いを叶えようとする。

　だけど、ココロのどこかで諦めてる、ぽっかりと穴が開くように受け入れてる自分も、いる。

　きっと、もう、助けられない。
　きっと、もう、無理なんだ。

　どんなに急いで、どんなにあがいても――きっと、もう、間に合わないんだって。


　おうさまに、新王：パラダイス様に、会ったものが出た、という噂が聞こえた。
　でも、会える場所は、すごくすごく遠い、天蓋庭園と呼ばれる場所の奥深く。
　ネクターの赫が咲き乱れ、天上までおおい尽くすような、そんな場所。

　ボクらは、大礼拝堂に立ちふさがるモノの前までは、奇縁で行くことが出来はする。
　でも、その大礼拝堂のバカをシバいて、更に進んで、５・６日かかる、その位の場所におうさまが、いる。

　今から、大急ぎで行ったら、間に合うものだろうか？
　もちろん、行けなくはないだろう。てふてふと、歩いていけば、１週間で、何とかなる。
　行こうとしないよりは、よっぽどマシ。

　ただ、恐らく、近道を知るものに先んじられて、意味が薄いんだろうな……とか、思ってた。
　つまりそれは、そのものに結末の切符をゆだねなければならないってこと。
　もう、ボクらがどうあがいても、ボクらの手でどうにかしようとか、間に合わない。
　もう、無理なんだろうな――て、こと。


　――そう、ボクは、“おもっていた”んだ。


　

シャリン――、シャリン――
　どこからともなく音がする。

　　　シャリン――、シャリン――
　　　　それは、だんだん近づいてきている、そんな気がする。