『アルビオン伝説』

〜第3章　誓いのヒベルニア〜
アルビオンの西に位置する、一年の全てを雪に閉ざされた常冬の島ヒベルニア。
魔の迫り来る今、戦士たちはヒベルニア国の力を借りるため、
王都ミースを訪れていた。
「マクフィヌス王に仕えるハウンドという騎士は、数々の誓いを立て、
その力を強めている。誰にも彼には勝てないよ」
町人は口々にそう話す。
「ここヒベルニアでは、話の通り誓いの魔術が特に発達しておる。
民どもは誓いに己を捧げ、代わりに特別な魔術を得る」
故郷の道案内をする、獅子族ドルイドのコープルが戦士たちに説明した。
「個人使用や国からの任命、都市単位で願をかける時にも使われる」
「仮にその誓いが破られると…？」気弱なザモテスが聞いた。
「死をもたらすような災いが降りかかる。誓いを誤った小村は一夜にして滅んだのじゃ。
誓いとは、自己を示す証でもあり、それを冒すことは…自らを切り刻むのと同義である。
ハウンドは実に面倒な誓いに縛られておっての、有名なところじゃと王の命に絶対服従とか、
人前で真の名を名乗らぬとか、犬や狼の肉を決して食べではならぬとか…」
「丸々太った秋の狼ほど、おいしいものはないのにね、かわいそう」
狩人のアルテミアが言った。肉を食わない羊族のザモテスは、何気なく言う彼女に驚いた。
「あんなに恐ろしい生き物を、太らせて食べるんだ…僕ら、羊族には考えられない」
「ほっほっほ、誓いの魔術とは、元はそういった部族の掟から生じてきたものかもしれんのう」
コープルは笑った。その長い髭にはとても合わないような幼い声につられ、戦士二人も笑い出した。
「ところで、コープル。そのおじいさんみたいなしゃべり方とつけ髭も…
誓いの魔術だったりするの？」
「こ、これは単なる趣味じゃ！」

不意にカゲの姿が、
その真っ黒な掌から溢れる泥闇に包まれて溶け、小さく小さく縮小されていくと、
小さなトカゲの姿に成った。

カゲの声は頭に響くような声に変わり、声のトーンもまた別のモノになる。

小さな蜥蜴が見上げて問うた。

量産という言葉と、後ろにと言われれば思わずバッとレイが後ろに振り返る。