赤、朱、紅、緋、明――
　全ての『あか』を詰め込んだ景色。
　光り輝くネクター。空すらも覆われて、日も差さないのに驚くほど明るい。

　これだけあれば摘む気も失せると思う。

　そうぼやいたのがコノエには聞こえていたらしく声を殺して笑っていた。
　色彩の暴力じみた赤たちは、けれどところどころ黒い。
　ここで流された血の色だ。

　皮肉にも、それを流したのも流させたのも新王ではない。
　人狩りの園と呼んでも過言ではない場所に私たちはいる。

　ここを一歩でも進めば新王に会えるらしい。
　それは私たちにとってはただの旅行の終わり。

　新王が居るらしいネクターの大樹を見て、エルヴェアが手を叩いて笑っている。
　彼女の歌が朗々と響いている。

　　　　　　男はそっと指輪に口づけた。