お姉さんと呼ばれるリリスのエンブリオ――アレジアはそっと迦楼羅の近くに現れた。

僕はアレジアお姉さんをずっとエンブリオと認識して、時々何か教えてくれるそれくらいの認識だった。

だけど、むっくん――睦月とそのエンブリオであるナズナから話を聞いて、

そして元々人間であって、エンブリオになったというアレジアの知り合いというヴァンデルに会い、

絡み絡まり解けない糸の辿り口を漸く少し見つけたような気分だった。

お姉さんは変わらない口調で僕に問う。

声を荒げ、そして段々と小さく、最後の方は不安そうに訴えるように、彼女の方を見た。

そして、言葉を続ける。

迦楼羅の問いに、アレジアは一息ついて少しの間何も言わず、小さな笑みを浮かべた。

そう言って彼女は言葉を続けた普通の出来事を話すかのように。

真っ直ぐ向けるその眼差しに、彼女は小さく笑みを浮かべた。

少しだけ考えるような様をし、口を開く。

それが誰なのかは教えてくれない、けれどその人物を僕は何処かで知っているような気がする。

誰だったっけ、ううん、それよりも次に聞くことがある。

その名前を口にすると、お姉さんは眉を顰める。

まるで知っているような素振りを見せ、首を横に振る。

知らないと告げるその表情は、とてもそうには見えなかった。

だけどお姉さんはそれ以上を語ろうとはしなかった、沢山聞きたいことはあった。

ああ、そうだ、明日は久しぶりにグノウと二人で旅をする――