とある貴族の伯爵が遺したと言われる怪文書。
突如失踪した伯爵の最後の手記は、たくさんの学者や魔導士の目に通されてきましたが、
未だかつて、正式に読まれたことは、ただの一度もないのでした。
紙の上で、臓腑を剥き出しにした蚯蚓がのたくったような書体は、一体何を顕わし、誰に向けて書かれたのか。
目を通しただけで気の触れるほどの書面は、一体何を書かれているのか。
魔導院の博士号まで持った学者達が、まるで幼子のように泣きじゃくりながら、うわ言を呟き続けるその様を見て、
王は、この怪文書を封印することを決めたのです。

封印された怪文書の解読が再開されることとなったのは、それからもう何十年も後のお話です。
南の果ての氷の海、その深い深い氷に閉ざされた遺跡の底の底。
そこで見つかった、今にも崩れて砕けそうな古書に記された記号概論。
人間でも、エルフでも、魔物ですらない何かが使っていたであろう、見ただけで人間の精神を蝕んでいくような、奇怪な文様。
そして、そんな文様で描かれた手記を、伯爵はなぜ遺したのか。


手紙は、誰に宛てたのか。

飛んできた棘を鎌の腹で受け止める。
大して強度のない鎌には亀裂が入り少し貫通する。

月夜霊の名は伊達ではないようです

消えていった地面をぽんぽん叩いてみる。

　　

夜の街中で少女とであった少年は、自分とよくにた顔の少年と、手話でなにやら話しをしているようです。しばらくすると、少年は近づいてきた少女にちかづきますが・・・

玄関からウィルを呼ぶ鋭い声と、間髪を入れずに扉を強く叩く音。

警戒を強め、空気が張り詰めたのもつかの間、扉が破れるような一際大きな音が家中に響き渡る。

問答している場合ではないと悟ったようだが、その音に気を取られて、一瞬だけ、目の前の少女から注意が逸れた。