「私の故郷に…　私の家に、来ない？」














「………っおい！！」


はっとわれにかえった猫。
ししょーがこちらをみつめていました。


『……ししょー、どうかしたのです？』


「どうかしてんのはおめぇだろ！一体どうしちまったんだよ？」


『…小生がどうかしてるのです？』





くろいきしさまをみんなでたおしたそのあとで。

猫はセリィおねえさんとおはなしするきかいがありました。
そのときにいわれたのが、「わたしのいえにこない？」というもの。

そのいみは――


猫は、けれどもそのこたえをかえさないままおねえさんとわかれてしまいました。
せいかくにいうなら、かえせるほどのよゆうがなかったのです。

むねはどきどきして、あたまはまっしろになって、まるでねつでもあるかのような――


わかれたいまでも、そのときのことをおもいだすとそのふしぎなきもちがよみがえります。





そのままかたまってしまった猫に、やれやれとししょーが


「ったく頼むぜホントによォ・・・・・。さっきから全然身が入ってねェじゃねェか。
恋患いでもしたんか全く？
――ま、冗談に決まって・・・・・」


じょうだんと、わらいとばすししょーのことばはみみにはいっていませんでした。


もし、猫のからだをおおうくろいけがわがなかったなら、きっとそのかおはまっかになっていたにちがいありません。




















―――おねえさんのことをおもうとどきどきするこのきもちは、もしかして―――














「――おい、まさかとは思うが・・・・・。」


「シッ、・・・・・そうっとしておいてあげましょう。
見たところ、多分あなたが思っている通りではないかと。つまり坊ちゃんは――」

どうにもうわのそらのようすでスチュおにいさんのうしろをもくもくとついていきます。

なにかかんがえごとをしていたのか、てきがちかくにいることにきづかなかったようです。
あわててスチュおにいさんのうしろにかくれてしまいました。