お……げ……

……っ！！

…………

……楽になりました？

…………多分、な

……そうですか。それなら先に進みましょう。
……あくまで推測ですが。また、似たようなことが起きるかもしれませんね。
その場合、恐らく今度はもう少し分かりやすいのではないかと…

……行こうぜ

無自覚の才能…か

……

まぁ…私はいいのだけれどね。
でももしも私の仲間に被害が及んでいたら…
貴方もあの男もタダでは済まさないわ

…気概が見えれば、貴方を助けてくれる人もいるでしょう。

……少なくとも、私はずっと迷路にいた。
使命や運命なんてものすら私にはなかったもの。

ただの傀儡、それに最近まで身を落としてたわ。
諦めるや諦めないといった選択肢も、私には見えなかった。

………光が差すまではずっと、
自分でない自分が、自分のフリをしているのを暗闇で見ているだけ

望んでいない使命なんて、この世に生まれた以上は
大なり小なりだれでも持っているもの……。

…貴方だけが特別ではない、と私は思うわ。
………今だから、言える言葉だけれど

ごめんね、心配させちゃって

うん、そう、だね……

自覚がない人ほど、そう見えていたりしますよね

そうですね、そんなものかもしれません
その退屈しのぎが楽しいかどうか、と

私も色々やりたいことはあるんですけどね……
今は人の面倒を見たりで忙しいんですよ

本当は家に引きこもって本を読んでゲームして、テレビを見ながら一日中ごろごろグダグダしていたいんですけど

忙しくていつの間にか、積みっぱなしになってるものが増えちゃって増えちゃって……

うん……何も知らない人にとっては有名なお茶ってだけだから……
普通に売ることもできるし飲用できるし……皆知ってたら売ることが出来ないしね……秘密だよ？

わたしの好きな事していいし……頼み事も嫌な顔しないで受けてくれるから……これで不満があったら贅沢になっちゃうかな……よく気も使ってもらってるしね……

そうなんだ……他の世界から来た冒険者の人達は大体契約してるから……まぁ今だとネクターが無いから契約したくても難しいかな……

へー……この世界だと契約無しで魔法使ってる人はあんまりいないかな……エンブリオと力を合わせたほうが強力だから……

そっか……なら予め場所を決めて移動出来るならそんなに怖くないのかな……どうやって決めるかは分からないけど……

うん……いま一緒に生活しているお姉さま達は異世界の人だし……ひょっとしたらお姉ちゃんが異世界にいるかも知れないから……もともと本で異世界のお話も少し読んだ事があるしね……今は色々準備中

――ふにゃ？　……、……んっ

ふふ。儂のいた世界では言葉に潜む韻に縁起を担ぐものでな。つい、気になった。
切っ掛けはそれでも、出会いに繋がればそれは嬉しい誤算よの。

神秘の道具を使いこなす輩は、何を身の内に潜めておるか判らん。
なにしろ、自分で生み出せぬ力をも操ることが出来るのじゃから。その実力は、万倍にも増そう。
夜一とやらに出逢え、しかもそやつが力尽くで事に及ぼうとせなんだのは、幸運じゃろうの。

……主殿に罪を押し付けたのは、許しがたいことではあるが。

ん、血が流れておる？
精神を水晶球に封じたのは夜一で、身体を用意したのは島にいたマナ使いではないのか。
そなたの話を聴く限り、どうも同一人物ではないかという気がしてきたのじゃが。

ふふ。今ならば、「鼓が妖狐が心から愛する相手、トガノ！」と名乗っても構わぬぞえ？
いや、いささかカッコ悪いか。せめて、「愛を知る流浪の殺人鬼」とか……。

……なるほど。確かに、マナで造られたものであれば、マナが抜ければ崩壊するは道理。
シオンの異能は、代用品に成り得る可能性を秘めているということなのじゃな。
残念じゃ。妖力がマナと同じならば、儂の力を分けることも出来たであろうにの。

呱々。しかし、完全に人間化するのも悪いものではないぞえ？
寿命は短く、身体も脆く、何かと面倒ではあるが、魂の輝きたるや生物の中でも随一じゃ。
創造神が自分に似せて造ったという逸話も、あながち嘘ではないのかも知れぬ。

それに。……人間に近づいてきた、ということは食欲も増したのではないかや？
儂ら妖物も食事で妖力を回復させる。今の主殿にとって、食事はマナの代用品になるのではいかの。

――ほう！ ならば島の戦の最中、儂の知人に出会うたことがあるかも知れんな！
こんなことなら、もう少し詳しく話を聴いておくんじゃったの。

されど、過剰なマナは身体に変調をきたすことは知っておるぞ？
なんでも、黒い化物に造り替えられていくとか。
……まったく、無理をしおって。儂が傍に付いておれれば、体調管理もしてやれたのに。

……ふん。どうせもう、儂のすべては主殿に握られておる。好きにすればいい。

歯の浮いた科白を――！
忘れるでないぞ、そなたはまだまだ、じゃ！ もっと男を磨く余地は残っておる。
それに、慣れるにはまだ早い。……愛にぎこちない、初心な主殿の時間も、もう少し堪能したい。

嫉妬についての知識はあるようじゃな。
ならばせいぜい、嫉妬深い男には成らせぬよう注意するとしよう。
儂の一番が主殿であることは、努々忘れるでないぞよ。

む。とすると儂は、10歳以下の少年を手籠めにしたことになるのじゃろうか。
それはそれで美味しいが。いやいやそうではなく。
水晶球で過ごした年数は差っ引いておるのかや？　陸人と同じ年齢としては幾つなのじゃ。

儂の尾はな、何者かに断たれて持ち去られてしもうたようでな。
少々難解な話になるが、儂はこの世界に来る前には九つ揃えておったのじゃ。
揃うた瞬間に襲われて、封印されてしもうた。……次に目をあけたら、こちらの世界でな。

誰の手による仕業かは知らんが、どうやら儂の尾はエンブリオに偽装されておるらしい。
儂が儂であるために必要な尾がひとつ。妖精と毒竜にまぎれておった尾がふたつ。
便宜上、妖力の補給源としておるエンブリオにも儂の気配はするから、すでに得ておるのかも知れんが。

どちらにしても、尾裂狐はいずれ向こうからやってくる。本来の儂に戻ろうとすべく、な。
それが一年後か百年後かは理解らんだけで、の。
少なくともあと六本もあれば、今心配すべきことでもない。尾が増えれば儂も強くなるわけじゃしの。

呱々。ちょっとした悪戯問答、拗ねたふりの戯言じゃよ。真に受けるでない。

相手には傲然と見えるかもしれんが、儂は、身体を赦す相手は選ぶようにしておる。
愛を感じさせてもくれぬのに欲望に流されるような者には、抱かれとうない。
偶然といえど、主殿は儂の予想をはるかに越えてくれた。それが儂には例えようもなく嬉しいのさ。

まだまだ、理解はこれからよ。
出逢うて幾許も経たぬのに、全てが通じ合うなどあるはずもない。
されど。儂を従僕ではなく、対等の相手と見てくれる相手はきっと、お主が一にして全てであろう。

行動を共にしたい処じゃが、そうはいくまいな。
同行者の中に、先に話した妖尾の簒奪者の情報を持っておる者がいる。――知らねば、ならぬ。

それに。そなたとの関係は、まだ伏せておく方が良いように思う。
シオン、そして、ハル。彼らに、あるいは彼らを動かす何者かに謎があることは、主殿も感じておろう？
ならば儂は、別の角度より彼らの秘中を探ろう。……いや、知っておかねば、儂が安心できん。

そうそう、これは治療の一環なのじゃ。
理由も解らないまま傷ついておる、そなたの心を癒す為の行為。
恥ずかしがることはない。儂を言い訳にして、手の暖かさを感じておればよいのじゃよ。

そうじゃのう。ハルも、どうせシオンを通してこの会話を聴いておるのじゃろうが。
しかし、少なくともハルはシオンを裏切ることはするまい。
沈黙では停滞を打ち破れぬとあれば、活路を見出して話をしてくれることもあろうて。

定時連絡の際にでも、兄君にさりげなく伺いを入れてみるのはどうじゃ。
心配している気持ちを表に出して尋ねれば、心配させまいと気を使われてしまうかも知れぬ。
そなたが堂々と頼もしくしておれば、ふと言葉に乗せて信号を漏らすこともあろうて。

何をしろ、とは儂は言わんよ。儂の入れ知恵程度でぐらつく話でもあるまい。
じゃが、傍から見ておるからこそ気づけることはある。

そなた今でも本当にこの世界の混乱が、自分達の背負い立つ国の役に立つと思うておるのかや？

……そう言えば、未だ名乗って居なかったか

フィンヴェナハだ…
白き角のフィンヴェナハ

それが、我の名だ
後はお前の好きな様に、呼ぶが言い

頑丈さの事は知らぬ
おそらくは、エンブリオなどという力のお陰だろう

そうでなければ……
我の身体も、例外なく吹き飛ぶはずだろうからな

……これで満足か？

食べるのはもったいないなぁ……

うーん……

…………

・・・ァ・・・・・タ・・・ミス・・・・・ウィォ・・・・・・

……なるほど