ちがう、今日は本気。ボク位しかコイツに用事らしい用事、ないし。
かくごはしつつだけど、あのねこみたいな人のまねしたらだいじょうぶだった、かな？

ん。

殺す……まあ、そうなるわね。
討伐って言葉には、相手を滅ぼすってニュアンスも含まれているから、あのルリアンナって子の依頼とは相反しないわよ。

……驚いたわ。
随分可愛らしいお嬢さんの声だったものだから。

気に入らないから殺す…確かに、ふざけた理由よね。
貴女が怒るのも無理もないかもしれない。
でも、そんなふざけた理由であっても、傭兵である以上依頼は果たさなければならないわ。

それに、そのあたしの大元の依頼主……『あの人』が間違った判断をしたことは一度も無かったわ。

……ま、気まぐれの権化みたいな存在だし、
何を考えているのか、未だによくわからない部分はあるけれど。

それでも、今回の依頼もきっと何か考えがあってのことのはずよ。
表面上の言葉とは裏腹に…ね。

あくまで表向きの理由…だけど。
個人的にも、王のことは許せなくなってきてるし…。

王を殺すのには反対……なのね。
じゃあ一つ、もしもの話をしましょうか。
パラダイス王を殺さなければ、彼に奪われたネクターが解放できない状態になっていたら、どうするつもり？
王を殺せないなら、ネクターは諦めて引き揚げるしか無いわよね。
貴女のようにネクターを奪われて、生活するのにも困ってる人……それだけじゃない、王に人生を狂わされた人だっている。
そうなった時、その人達には、何て言い訳するのかしら？
「王が死なないと、ネクターは解放されないみたいですが、王を殺したく無いのでそのまま帰ってきました」とでも言…

ストップ！　そこまでっ！！

ちょっとねーちゃん、さすがに言い過ぎだよ。
確かにそりゃ正論だけど、今そんな最悪の想定の話を聞かせてもしょうがないでしょ…！

……っ！　確かにそうね。
ごめんなさい、ちょっと言い過ぎたわ…。
トンボのお爺さんにも気を遣わせてしまったわね…済まないわ。

まあ、めでたしって思えないのは無理も無いと思うわよ。

でも、この身体になったことで繋がった縁もあったと思うの、それはこれからも…。
あのまま死んでいたら、そんな出会いを経験することも出来なかった…そう思えば、ね。

美味しそうに食べるねっ。
そんなにがっつかなくっても、団子は逃げないからゆっくり食べていいんだよ？

……こほん。

へぇ…そのブリキの子が付けたのね。

簡単でもいいじゃない、クロちゃん…可愛い名前だと思うわよ。

な、何でそこで残念がるのかしらっ……！？
変な期待をされても困るわよほんと…。

ほらほら、期待されてることだし、はやくはやくはやく…！

いい加減しつこいわよ！
そもそも不可能だって言ってるでしょうに、全く。

混ぜ混ぜ…まさに今のこの世界の現状ね。
一揆が終結すれば、元の世界に帰る者もいるでしょうし、少しは落ち着くと思うけれど。

外の世界…ね。
メルンテーゼ以外にも、色々不思議な世界を回ったわ。
巨大な機械人形を内部から動かして、戦闘をする世界とか…ね。

このメルンテーゼも、相当不思議な方だとは思うけれど…。
森で自立歩行して喋る温泉を見た時は、思考が停止したわよ…。

いやあ、同じかも知れないし、そうじゃないかもしれない。

不愉快にさせて申し訳ない。どうしてユノ殿が力を貸していたのか、
気が合うからなのかな、って思ったけど。
エンブリオとしての契約もあるんだよな……。

それぞれ考えがあってそうしていることは承知の上だ。
賞金首も、エンブリオも、新王の側も……。
ソウ殿は奪ってもいいと考えるし、私はそうじゃないと考える。

同じ所に所属しても考えが違うのはそうだ。
でもそれなら敵と言われる側からだけ、奪う。

もし一揆衆からも奪って力を蓄えたとして、
この事態をその力でおさめても。
私の心は晴れないだろうし、住みづらくなりそうだ。

一揆は――国の“えらいヒト”を直接訴える――事とは聞き及んでいる。
そしてこの豊かな世界で暮らすのが私の目標だったから、
多少乱暴なことに力添えしても、話し合いの末に場を収められると思ってたよ。

……思えば戦争のような事態になってるな。
新王の姿はないし、なべて兵たちと戦っているだけだ……。
そしてルリアンナ殿は、本気で新王を討つつもりだったのか……？

でも実行するつもりなら、それは私の意に反する所だ。
彼女に雇われている身の上でも止める。
ここにきて殺すのは本意じゃない。

……。

出来たら私の《いのち》を分けてあげられたらよかったんだけどな。
それで、今更奪うのをやめろだなんて都合のいいこと。
どちらも難しいことだものね。

君の教育には・・・・・そうだな・・・・・・・・

ふふ、ふ・・・・・つ、つよがりおって・・・ッ！！

さぁ行きますよ、皆さん。

任せちゃってくださーいっ！！

任せちゃってくださーいっ！！

・・・全く、悪くもない脳だろうに。運用を誤っているな。

いや、ウルドスピンによる影響は脳にも及んでいる・・・・・あれを次元的な見方ではなくあくまでも肉体的な見方で捉えるならば、或いは・・・・・

そちらも先への用事かね？だったらまた会うことになりそうだが。

・・・ひとまずは、お先に行かせてもらおう。

守るだけじゃ前に進めなかったな、今度は守って倒せるように
千巌も鍛えるぞっ。

……天使？それが私に何の用かしら、人違いではなくて？