身体は死ぬ。
死ぬように出来ている。
陸の生き物なら、空気がない。
水の生き物なら水がない。
餌がない。
過剰な高、または低温。
負傷や捕食、病気、毒。
原因の枚挙には暇がない。
幾日もすると腐敗を始める。
更に時間を過ぎれば、肉は形を失う。
骨が残る生物は残り、そうでなければ痕跡さえも残らない。

心は、どうなのだろうか。
心が死ぬのは何時なのだろうか。
或いは、死んだらどうなるのだろうか。
身体の死と、心の死は同義ではないだろう。
心が死んでいるとして、それは死していると評せるだろうか。
そして、心の死したものは自覚できるのだろうか。

わからない。
わからない。
わからない。

願う気持ちは変わっていないと思う。
その変化のなさが、信じられなくなってきている。
ぼくは生きているんだろうか。
ぼくらの誰ひとりとして、返答し得るものはない。
問いはいつでも、ただぼくの思考を響かせることしかできない。

くらい
きこえない

でも、たぶん。
いまぼくが駆ける先には誰かがいるんだろう。

触れる事のできない誰かが。

ぺちゃくちゃと必死に、だがどこか機嫌良さそうに子供が話す声。
それを追うように、杖を使った歩きにくそうな足音が響く。

足音は、その竜の前で止まったようだった。
子供の声も、止まる。

「聞こえるか、イース」

戸惑いを引き摺るように左右に首をおおきく揺らしながら、竜はゆっくり、歩みを進める‥

竜は再び、首を巡らせる。――不安げに数度周囲をきょろきょろと見回して、駆けて、駆け去っていった。

木で作られた台に乗って、踊りながら歌っている女の子がいる
１曲歌い終わると、ちらほらいる観客に向かって話しかけ始めた