ダルシャナの事典亭――

……私は五人兄弟の末っ子だった。
ギュンター、リムロッソ、ヘスティア、レシェフ、そしてアシェラッド。
子にケーナズを冠させる”燃える岩”は最後に私を産み落とし、その炎を絶やした。

未分化の私を除けば、女性を選択したのはヘスティアだけである。


私達二人は亭主に断りを入れると、開店前の店内、その一つのテーブルに腰掛けた。

姉さんは、サラマンダーの集落から人間の都市カヴィオスに下り、
ブラックスミス・レオと契りを交わした。


カヴィオスのしきたりでは、サラマンダーと契りを交わした者は
他の人間との婚約を禁じられる代わりに、最高の炎を扱う術を約束される。
レオは姉さんと結ばれ、イクスクオラ全土に知られる程の名匠となった。


姉さんの齎す炉の炎から生み出された武器の数々は、
時に遠い地のほかなる英雄に振るわれ、災厄を討ち滅ぼした事もあったそうだ。




無論、業物を生み出すのは姉さんの炎だけではない。レオ自信の腕前もある。
寡黙で職人気質だったレオは、
ただ無心に、心身を鍛冶に捧げて打ち込み、色恋にはまるで興味を示さなかったという。


先に恋をしたのは姉さんで……レオの為に女性への分化を選択し、
彼もまた、姉さんの粘り強い”押し”の末に、伴侶として認めたのだそうだ。
今はカヴィオス一のおしどり夫婦とまで言われている。

私が友人だと思っていても、向こうがどうかは分からない。
そう打ち明けると、姉は朗らかに笑った。

私は脇に置いてあった荷物の中からスケッチブックと鉛筆を取り出し、簡単な似顔絵を描いた。

思い起こせば、戦場で出会った人、酒場で出会った人、ほかなる場所で出会った人……
私が普段意識するよりもたくさんの顔が浮かんで来たが、
その中から私は、戦場で苦楽を共にする人々を姉さんに紹介することにした。

次に私は、若い戦士の男性の像を描く。

次に私は、翼の生えた美しい男性の像を描いた。

一人でとぼとぼと階段を上っている。

皮袋の財布を開く。

ヴァランタンの実技試験を終えた後、アシェラッドに近づいてくる。

俯いた赤い顔を見て我に返った様に謝罪をするが、
笑顔を向けられると、ユキナも安心したように笑む。

小さく、何度も頷きながらアシェラッドの言葉を聴く。

一瞬、目を丸くした後、アーシェを見て、急に軽く笑いだす。

ひとしきり笑い息を整えた後、軽く肩をすくめながら言う。

槍を構え直し数歩下がると、自らは姿勢を低くしてブーイオを駆る。

1D6 = 6 ( 6 )