(´･ω･`)

―　ペドロの部屋の前　―

暫くドアの前で考え込んでいたが――

コンコン、と軽くノックをする。
「また誰かが倒れることがないだろうか。」　そんな不安を持ちつつ反応を待つ……。

強ばることも拒むこともなく、その身体は引き寄せられるままその手に応じた。
乾きかけた血の残る額が男の胸元に埋められ、わずかな赤色を残すかも知れなかった。
呼吸のたびに僅かに胸と背が上下する以外、ほとんど人形のように動きを止めたまま。

連れて行く。なにがあっても。

その言葉に、それまで動きを止めていた少年の手がゆっくりと男の胸を押し、
やんわりと互いの身体の間に距離を作った。
間近の距離からその黒い瞳を見上げて、その模様を確かめるように――これほど間近に彼を見るのは初めてのことなのだから――わずかの間、そのまま動かなかった。
その顔は虚空を見つめ続ける彫像のように、捉えがたい表情を張り付かせている。
そうして、おもむろに視線をその胸元に落として。

わずかに掠れた声でそう言うと、ゆっくりと男の胸元から自身の手を、身体を離す。
そうしてそれ以上は何も言わず、そのまま男の元を去ろうとする。
引き止めなければ振り返りもしないだろう。

声をかけられて喜んでいるのか火蜥蜴の刺青はちょこまかと這い回り
ペドロに一番近い場所まで移動してから何度も舌先を動かし

ごぶり、ごぼりと小さなエンブリオから泥が溢れ、大男程度はある泥人形になる。

少し離れた場所から見守っていた父親に手を振る。
グリゴリは、軽く笑って手を振った。