会話が容易になったので、マリーと少々話をすることにした。
　生い立ちとか、なぜナイトスピリットというエンブリオになったのかとか。
　スマホを介しての会話だが、向かい合って座ってたマリーの表情が文章に合わせて変わるので、
今回はアプリのアイコンでなく彼女の表情を添えてまとめよう。

　そこまで話して、マリーは一瞬目をそっと伏せた。口元は微笑んだままで。

　そういうと、マリーは微笑んだまま、口元にきゅっと力を入れた。心なしか瞳も潤んでいる。
恐らく、後悔とか後ろめたさとか、そういうのが入り混じってしまったのだろう。

　言い終わると同時にせき止められていた涙があふれ、あとは泣きじゃくるだけだった。
自身の命を奪ったその剣を抱えながら、ただただ悲しそうに苦しそうに嗚咽を繰り返していた。

　顔は笑顔だけど怖い女王様、そしてこの世界の俺と仲の悪かったお姫様。心当たりは十分ある。
絶対あいつらだ、紅とかいう女と、その娘の小百合。

　あいつらマジで死ね。


　さて、ユーグリットとの話を思い出そう。あいつは確かにこの世界の小百合……リリーに仕えていた。
あいつが言うには、リリーが剣を清める役割を担うはずだった。
　マリーの口からはユーグリットのことは一度も出たことがない。面識がないのだろう。
　ユーグリットは儀式の実験台か何かで本番前に先に命を落としている。
だから、当日誰が実際に剣を清めたかまでは知る術がなかった。
　となると、ナイトスピリットのコアがリリーだと思い込んでも仕方ないな。
　マリーの話から考えると、元凶は女王だ。もしかすると女王に何か吹き込んだ奴もいるかもしれんが。
　ユーグリットにもう少し話を聞きたいところだが、マリーが本格的に覚醒してから姿が見えない。
　……まぁ、今更そこを追求する意味はないが。大事なのはマリーの心の平穏を取り戻すことだ。
　俺がマリーにできることは何なんだろう。
　とりあえず頭を撫でてみたら、それだけでマリーは頬を涙でベタベタにしながら嬉しそうに笑った。
　こんな小さい事でこんな幸せそうにするとか、マジ天使だな。

"森に閉じ込められているように思えた。"
その一言に目をぱちくりとして、それからふっと柔らかく笑った。

木で作られた台に乗って、踊りながら歌っている女の子がいる
１曲歌い終わると、ちらほらいる観客に向かって話しかけ始めた