■ 幕間

マニー親分の一行がお城の中にあるおかしな山を進むこと数日。
岩だらけの山は進んでも進んでも何も無い。
「親分、いつまでこんな山を登るんで？」と乾分のハチベも痺れを切らし始めた。

「何でえ、文句でもあるのけえ」と親分。
「だって、どんどん天守閣から遠ざかっているじゃありませんか。
　このままじゃ一揆が終わっちまいますよ」とハチベは返す。
「それはそれで目出てえじゃねえか。それに気になることもあるしな」
と、親分は何やら思案顔で話し出した。


「気になるのはふたつだ。まずは何よりこの城の化け物どもだな」
と言って上を見上げると、何やら大きな影が空を横切った。
「とにかく何でこんな化け物がいるのかがわからねえ。
　えんぶりおならともかく、そうでないただの化け物も多いからな」
「そう云えば、えんぶりおもやたら沢山居ますね」と、ハチベも頷く。

「ふたつめは逆に、いるはずの侍や足軽たちがほとんどいねえことだ。
　居るのは坊主やら学者やら、とても城を守ろうって布陣じゃねえ」
「ま、その割りにゃ手強い奴らでしたね」
「ああ、連中は殿様の力だって云っていたな」
と、どうやらおかしなところが明瞭としてきたようだ。


「つまり、殿様が妖しい力で化け物をつくったりしてるってことですかい」
とハチベが尋ねる。
「まあまだわからねえがな、とにかくこの城がまともじゃねえのは明らかだ。
　そもそも城って云うより大掛かりな実験場みてえじゃねえか」
と親分が言い終わると、ちょうど城内が見渡せる崖の上に出た。

「で、親分はここで何を探してるんですかい」とハチベは訊く。
「さあなあ、だがお城の中は殿様の手の内だろうからな」と親分は城を指す。
「何か手掛かりがあるとしたら、此処みたいな死角じゃねえかってことでえ」


「ま、それにここならしばらくは様子が見られるからな」
と、親分は少し声を落として言った。
「このまま城の中の連中がさっさと殿様を討ち取ってくれればそれで良し、
　そうでなくても何かの手掛かりくらいは残してくれるだろうぜ」
と帽子の影からにやりと笑ったのは少し意外だった。