怨霊の兎娘、シロウサギは魔女から奪った金の塊をつらつらと眺める。
平べったい金貨のような形をしたそれは刀の鍔である。

じっと目を凝らす。
そこには何の変哲もない金細工の鍔があった。

怨霊の兎娘は先ほどの悪霊のプルとの会話を思い返していた。

くく、と悪霊を前に怨霊は低く笑う。
しかし悪霊は聞いているのか聞いていないのか、黒いモヤが視えると言い、よくないものを感じると言って金細工の鍔を撫でる。


………
……
…

――そうだ。
そう、確かに怨霊の目には見えなくとも悪霊の言う黒いモヤとやらはそこにはあるはず。　
それならば最近シロギツネ様の様子がおかしい事への不安もただの杞憂でしかない。

怨霊の兎娘はそう自分に言い聞かせ、金細工の鍔を懐に納める。

怨霊の兎娘は気づいていない。
悪霊の戯れによって金細工の鍔を取り巻いていたはずの黒いモヤはすでに取り出されてしまい、そこには何もない事を。