ヤヒロの注文を受け、斧を一本作り手渡す。

戦闘用に調整した戦斧ではなく、割り斧、薪を割るための斧だ。
上段に構えて振り下ろす、重さと勢いに任せて叩き割るというシンプルな道具。
刃物の扱いは全くの未経験であり、また乱暴に扱うという自己申告があったため、刃は潰してある。
斧頭と柄と合わせ、総重量は3kgほど。一般的な割り斧の重量は2kg前後なので、やや重い。
本人の『貧弱』という言葉を受け敢えて平均よりも重くした。
片手で持てる重さなどと注文をつけていたが、先端に2kg弱の鉄塊のついたものを、
遠心力に逆らい片手で制御するなど、よほど鍛え上げた筋肉の持ち主でもなければ出来ない。
この手の柄が長く重心が偏った武器はどんなに軽かろうが両手で握らなければ武器に振り回されるものだ。
ヤヒロはその成り立ち上、身体機能や痛覚などが鈍い(とティムラハは経験上認識している)。
無理をしようと思えばいくらでも無茶が効く身体であり、痛みによる躊躇が発生しない。
片手で振り回せると判断し実行してしまえば、容易く腕を破壊しまうだろうと推測できた。
よって下手に軽くするべきではないと判断し、両手で扱わせる為に重くすることにした。

ちなみにトモの体重はおよそ4kgほどある。
片手に提げて苦痛に感じない重量として参考にした結果、この重さに落ち着いた。

――のだが、ヤヒロはそんなことは当然知らないし、ティムラハも話す気は無かった。
片手で持ち上げようとしたヤヒロがじろりと睨む。

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