シュガー達は再び森の中の探索をすすめた。確保し損ねていたエンブリオのサテュロスを捕獲したり、装備調達用の材料を探索したりと忙しく働いたのだった。

食材の採取も重要な仕事の１つであった。森の中に竹林があり、シュガーはタケノコの採取を思いつく。タケノコは竹の新芽であり、小さいものほどおいしいものだ。シュガーは落ち葉に隠れていないか、注意深く探索して回り、アイリスに湯をわかしてもらい、見つけ次第ゆでることにした。採取したタケノコはその場ですぐに水煮にしてしまう。採取したタケノコは時間が経つにつれてえぐ味がましてしまうので、すみやかに加熱処理を施さなければならないのだ。一部のタケノコは、刺身にしたり、天ぷらにして食べてしまう。

タケノコの加工作業を終えて搬出の準備を整えたシュガーは、一揆衆のエンブリオを呼んで出荷の依頼を行った。タケノコの水煮は集配エンブリオと一緒に飛び立ってしまい、今日の夕方には各地の売店で販売されるとのことだ。シュガーの様子を平家の怨霊である知盛の霊と安徳帝の霊が興味深そうに眺めていた。

パーティの戦力は半減し、大廊下の進行作戦は頓挫していた。パーティには諦念のようなものが漂っており、タケノコをお腹一杯食べたアイリスはお昼寝モードでうたた寝をはじめている。安徳帝の霊はそんなアイリスをながめてうーむと唸った。

どうも戦闘はあまり得意ではないようなのだ、針仕事や道具の修繕は好きみたいなのだが、とシュガーは続けた。

シュガーはシャツの胸ポケットから一枚の紙切れをとりだしニヤと笑った。策はあるといったふうだ。紙は一揆衆の伝令用エンブリオがよく作戦書の伝令に用いるやつだった。

突貫とは２つのパーティが共同で攻城作戦を行うことである。シュガーは紙の内容を読み上げる。内容はとある一揆衆によるシュガーへの突貫協力要請であり、一揆衆の名は「れんたろう」、闘技大会でシュガーと共に戦った自律自走砲である。シュガーは彼らの攻城を手伝うつもりであると述べ、その上で、ただ働きにはしないつもりだ、と続けた。

シュガーは目下の問題点を説明した。まず、相手パーティへの突貫要請は、こちらの大廊下の進行の準備を完了させてから行わなければならない。次の大廊下の進行がその準備にあたり、その戦いには決して負けられない。また、相手パーティが希望する突貫対象はイルヤナといい、「こちらの与えたダメージが一定の威力だった場合、そのダメージを上回る回復を行う」という特性をもつ難敵であった。無策で臨めば返り討ちは必定といったあんばいなのだ。そんな説明を続けていると、今日も今日とて冥府からの声がシュガーの耳に届く。草原を吹き抜ける風のごとく爽やかな声であった。

勝てば解決、そこは同意だがな、とシュガーは１人呟いた。風が吹いて竹林の竹がざわざわと揺れる。現状を打破するには、勝利しかない。

シュガーは怨霊と会話をしているようです

シュガーは怨霊と会話をしているようです…

シュガーは時々意味不明なことを呟きますが、
　きっと怨霊と会話をしているのです。気にしてはいけません。