声にならない叫びをあげながら、目を覚ます。
悪い夢でも見ていたのだろうが、思い出そうとしてみたところでその内容は思い出せず、ただ息苦しさと疲労だけが残っている。

隣の部屋……セリーナの寝室からは人の気配がしないので、セリーナはすでに起きて朝食の準備でもしているのだろう。
軽く身支度を整えるてから、部屋を出た。

セリーナの不可解すぎる言葉に、思わず少し裏返った情けない声をあげる。

起きたばかりだというのに、寝てきて下さいという言葉。
昨夜は遅くまで起きていたわけでも、今朝目を覚ますのが早すぎたわけでもないのに、不可解すぎる。

セリーナの口からこれでもかと続く不可解な言葉。
機嫌が悪いという様子でもなさそうだし、いったいどうしてしまったんだろう……。

有無を言わせないといわんばかりのセリーナのきつい言葉に困惑しながら、大人しく言われた通りに洗面所へ向かう。

洗面所のドアを開け、顔を洗おうと、洗面台の前に立つ。

そこでやっと、セリーナの言っていた意味がわかった。

洗面台の鏡に映る顔。
元からそんなに血色がいいわけではない顔色が、生気を感じさせないほどに青白くなってしまっていた。

聖騎士とはいえ、騎士としての鍛錬を積んだ期間は短く、体力もある方ではない。
このメルンテーゼに来てから、戦いに継ぐ戦いの日々。
限界近くまで疲労がたまっている事にすら気付かないほどに疲れきってしまっていたようだ。

軽く顔を洗い、洗面所を出る。

料理の手を止めてこちらを不安そうに見ていたセリーナに声をかける。

自分の情けなさに腹が立つが、今の僕にできる事はしっかり休んで少しでも早く体調を回復させる事だけだ。
部屋に戻るとすぐにベッドに倒れこみ、そのまま意識を手放した。

　　　　　　　　手先で空中に曲線を表現する。
　　　　　　　この男の頭がわいてる。失礼！

　　　　　　　　だらしない顔になった。

　　　　　　　　不意に遠い眼をした。

木で作られた台に乗って、踊りながら歌っている女の子がいる
１曲歌い終わると、ちらほらいる観客に向かって話しかけ始めた