（――メルンテーゼの一揆勃発、それと時間軸を同じくする『とある異邦』での一幕――）


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　「……理由。理由、か――それは、極めて難しい設問だねぇ。
　　そもそも、ボクは主体性をもってかの“創造”に助力したワケじゃあないよ？
　　ただ、旧き親友(とも)にどうしても、と頭まで下げられれば、友誼には応えたいじゃあないか。ふふふ……」

　「ん？　ああ、そうだよ。
　　ボクにとって彼女は、旧き親友――今もボクは、変わらずそのつもりでいるよ。
　　たとえ、彼女“たち”が変質し、あるいはもう元に戻れなくなってしまったとしても。
　　ボクの心に残る友情は、ボクが滅びるその刻まで、きっと不滅さ――ふふふ」


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　「ふん、何を改まって尋ねるのかと思えば――“人形”とは、随分古い遺物を思い出させてくれるものよ。
　　私に言わせれば、あんなモノは『失敗作』以外の何物でもないがな……
　　創造主の求める能力には足りず、不要かつ余分なところばかり高性能と来ては、利用価値を見出すのも至難ゆえ」

　「そういえば《風幻王》は、随分とあれに肩入れしておったな。ふん、芸術家の血でも騒いだというところか？
　　いや、どちらかというと『創り手』――《空殺王》の奴めに対する義理ゆえか。
　　今となってはあのガラクタも、在りし日の《空殺王》を偲ばせる数少ない“面影”ではあろうしな。……ふん」


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　「知るかンな事俺サマに聞くンじゃねェ。非番の合間まであの疫病《神》連中と関わるのなンざ御免だタコ！
　　……記録のため、だァ？　よりによって“人形使い”なンつうキワモノの記録なンぞ、何に使うつもりだか……」

　「だから知らねェっつッてンだろしつッけェな！
　　《空殺王》がどっかから原型用意して《風幻王》がガワ担当、ンで《氷機王》に押し付けて『量産』しようとしてポシャった、と。
　　俺サマが聞いてンのはその流れくれェだよ。わざわざンなキモい代物創ろうとした動機なンざ知るか。知りたくもねェ」


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　「イイエ？　『量産』ニ失敗シタ、トイウ事実ハアリマセンヨ。
　　依頼ニオイテ指定サレテイタもでるノ精度ヲ確保デキナカッタノデ、『生産』ヲ断念シタたいぷハアリマシタガ。
　　ソノ部分ガ誇張サレテ伝ワッタノカモシレマセンネ」

　「アラ、今デモ当時ノ品質ノママ稼動シテイルノデスカ。ソレハ重畳デスワネ。
　　今トナッテハ伝エヨウモアリマセンガ、創造主デアル《空殺王》ガ聞ケバ喜ブデショウ。ウフフ」


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　「何じゃその『めるんてぇぜ』とやらは。面白そうじゃな、わし今からそこに遊びに行っても良いか？　良いよな！
　　……良いではないかー。このケチめー。ケチは将来ハゲるのじゃぞ！
　　なに？　聞きたいのは“人形使い”の情報じゃと？　そんなもの、わしより物知りがよっぽど他におるじゃろ……」

　「そうじゃな、確かに《空殺王》にはわしの“要素”を少々提供した覚えがあるぞい。
　　《空殺王》が生みの親じゃが、このわし《海冥王》は言わば“人形使い”のオリジナルモデルじゃな！
　　ある意味、あの生命体は『六変化・ザ・わし』という名で呼ばれてもおかしくは――そんな酷い名前ありえん？　五月蝿いわ！」

　「一応、理論上は不老不滅の超チート生命体として爆誕したからのう。
　　ラスボスまではいかんが、大ボスくらいは張って問題ない性能じゃよ。ふぉっふぉっふぉ！
　　ん？　いや、勿論そこは抜かりないぞい。いくつか“欠け”を仕込んでおかんと、本当に《神》にまで登り詰めかねんでの。
　　《風幻王》には最後まで“欠け”の仕込みを反対されたが、そこはほれ、《神》としての義務というヤツでな。ふぉふぉふぉ」

　「かっかっか――“欠け”の詳細は『とっぷ・しぃくれっと』じゃ。そこまでタネ明かしは流石にできんのう！
　　どうしても知りたければ、創造主たる《空殺王》をとっ捕まえて聞き出すがよかろうて。
　　のう、《******》よ……」


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　　――くしゅん！


　「あらマリア。風邪？
　　季節の変わり目は体調を崩しやすいんだから、油断したら駄目よ？」

　「…そうですわね。ごめんなさいませ、気をつけますわ」


　滅多に見せない――どころか、正確には一行が集ってから“初めて”見せた『くしゃみ』を、近くにいた未琴に案じられ、苦笑気味に取り繕った“人形使い”。
　ヴェールの下の口元を軽く手で押さえながら……やや憂い含みの表情を浮かべ、未琴には聞こえぬ程度の小声で独りごちた。



　「……いやですこと。
　　どなたか知りませんけれど、よからぬ噂話を流されている気配がぷんぷんいたしますわ！
　　きっと、とても性格の悪い殿方の仕業ですわね……」