無事に敵を撃退出来た事に軽く安堵する。
補給もこれで二度目。
随分時間を取らされたものの、
ようやくソウハの目指していたらしい目的の森へ行くことが出来そうだ。
……何やら恐ろしい調教シーンを見た気がするナナだったが、
ソウハと共に居たかった為、あまり深く考えないことにした。

こうしてソウハに調教されたスレイプニルに乗り、
一気に荒野を駆け抜けた二人は無事森まで辿り着くことが出来た。
地理に疎いナナはこの森の名を把握していない。
しかし鬱蒼とした森林からは人を拒むかのような、
それでいて入り込んだものを決して逃さぬかのような威圧感を感じる。
脳裏に浮かんだのは「壁」という単語。
名を知らずとも由来を感じ取れる程の植物の密度に、圧倒される。
闇に生きてきた自分だったが、自分とはまた違った質の闇に飲まれそうになる。

ふと気づけば、眼前の森林に気を取られているうちに
ソウハがフラフラと奥へ入り込もうとしていた。
慌てて追いかける。
暫く進むと、すこし視界が開けた場所に出た。

ふと聞こえてきた攻撃的な鳴き声。
慌ててソウハの姿を探す。
そこには威嚇中の白虎に、無防備な様子で近づいていくソウハがいた。
周囲を探れば他にもこちらに敵意を持った生物がいるのが見て取れる。
このままではソウハが危険だった。
思索に耽る間もなくソウハの元へ駆け寄ると、その腕を掴み歩みを止めさせる。
あの白虎は手強い――直感的にそう感じる。
手痛い一撃を貰う前に仕留めておきたかった。

ソウハに向けて言いながら、自分にも言い聞かせるように。
ナナは自らがあの白虎を見事討ち果たす、その成功のイメージを膨らませる。
戦いという名の日常に、その意識を浸す。

　　　　　　メタセコイアは見守っていた、愚かな地球と君の最期を。