棍使いの用心棒、ルドから言われるがまま肩を貸す。
不意に、耳元で囁かれた言葉。滑り込ませられた手紙。
メィレーやクローシェ、冬花は気付いてはいないだろう。というよりは、疑いようもないのだけども。
呪術師は――分からない。何を考えているのか、全く掴めないからだ。
ともかく、『気をつけろ』、と。確かにルドはそう言った。
それに対して俺が出来たことと言えば、表情を変えずに渡されたそれを仕舞いこむだけ。
自分は隠し事が上手いわけではない。余計なことをするよりかはマシだろう。
内密にしたがっているのであれば、その意図を汲むだけだ。少なくとも、『そうしなければいけない』気はした。



ブラッククロニクルの暴走から、冬花に連れ戻されるまでの間。
パーティから一時離れていた間にも、それぞれ大小様々な変化があったらしい。
俺が一部始終の詳細を全員に話したわけではないように、自分がまだ知らないこともある。
言うほどの重要性を伴わなかったこと。言う意味が無くて言わなかったこと。言いたく無かったこと。単純に、聞かれなかったこと。
理由はどうあれ、俺たちは全員、互いのすべてを知り尽くしているというわけじゃない。
だからこそ――




目を落とす。
手紙。
彼の筆跡で書かれたものではない、文字。
そこに書かれていた内容を、読み解こうとする。
けれど。

一先ずは、自分たちを阻まんとするエンブリオたちをどうにかしなければならないらしい。
呼吸をおいて、仲間たちを振り向く。
――戦いが、始まる。