弱い相手を甚振るのは得意だ。
暴力と僅かな休息の繰り返しで生物は確実に衰弱していく。
相手の苦しむ悲鳴を聞くと、誰かが喜んでくれるような気がして嬉しい。



僕のこういう感覚は間違っている。
健全な社会生活を営む上であり得ない。弱いものを甚振るのが得意なんて誰が聞いても最低だとわかる。
少しずつ治していかなければ。

――と、頭ではわかっているのに、どうしたら治せるのかわからない。

魔法で記憶を消してもらう、とか。邪悪な思考だけを取り除いてもらう、とか。
現実的じゃない方法しか浮かばない。
僕自身がどこかで考えるのを拒否しているからだ。もっと地に足の付いた方法を考えなければ。



例えば……相手を…もっと……甚振るんじゃなくて……　慈しむ…ようにする、とか。



……僕が相手を慈しんでいる光景が想像できない。まずい。



メルンテーゼへ来てからもずっと戦ってばかりいるから少し疲れているのだろう。
正直、僕は弱いから。もっと弱い相手と戦いたい。
そうじゃないと勝てないからだ。勝てないことは死ぬってことだ。
死ぬのだけは嫌だ。