11日目

記：＊＊＊＊＊＊

　一般的に砂漠では昼夜の温度差は大きいとされている。それは、ケル・サーベラスのいるこの枯れた土地でも例外ではない。日はとっぷりと暮れ、気温は徐々に下がっていき、反対の意味で生物が生活するには厳しいこの土地で、風を避けるために岩山の影にたてられたテントからは良い香りが漂っていた。

――ぐつぐつ

　半透明の液体が煮えたぎる鍋には熱が通って赤く色が変わった大ぶりの身がいくつかと、シャキシャキとした野菜が入っている。

「んー、そろそろかな？」

　そう言いながら、ケルは器用に箸を操って具材の煮え具合を確かめる。桜色の身はプリプリとした弾力があり、野菜は新鮮さを保ったまま程よく火が通っているようだ。漂う香りは食欲をそそるとても良い香りで、こうしているうちにもよだれが垂れそうになる。

「よし！ それじゃ、いっただっきまーす」

ぱくっ

「おいしーい！ やっぱり、カニは鍋だよねぇ」

　頬を抑えながら、ケルは表情を明るくする。彼女の周りでは具現化したエンブリオ達がそれぞれ思い思いにかにすきをかき込んでいる。魔物の大半が力尽きると消滅してしまうこの世界では、こうして戦果がそのまま食料になることは少ない。それ故に、こうして戦闘後に皆で囲む食卓はとても楽しい物になるのかもしれない。

§§§

記：ケル・サーベラス

　今日の相手はでっかいカニ！ でも、この間戦ったやつよりは弱いかな。焼きガニにしてあげたわ、ふふん♪

　そのあとは皆でそのカニを食べたんだけど、やっぱり体は大きくてもカニはカニ、とても美味しかったよ。これでみんな元気になったし、また明日も頑張れそうだね






＊次回の日記＆更新はおやすみするかもしれません＠MASA