少女と石像。

お城の大廊下で出会ったふたりを前にして僕達は戦闘態勢を取る。

ふわもこ達の気合は十分だ。どうやら昨日の研究棟での激しい戦いの余韻が残っているようだ。

僕は相手の様子を伺う。
石像が少女を護るように前に立ち、少女はその背後から僕達に射線を向ける。
どうやら典型的な前衛後衛のようだ。

あの距離であれば少女を直接狙う事ができるかもしれない。
そう考えていると不意に少女の姿、いやその周辺が不自然に揺れる。結界の類だろうか？
視界が歪むほどのものなら決して薄くはないはず。仮に攻撃したとしても手間取ってしまい速攻は狙えない。
それならば先に前の石像を何とかした方がよさそうだ。
僕達はふわもこ達に指示を送る


狙うは石像、彼を速攻からの一斉攻撃によって行動不能にさせる！


僕達は合図の下、呼吸を合わせて相手との間合いを一気に詰める――！




・〜・〜・〜・〜




――それから十数分後。

僕達は少女を抱えて重い身体を引きずり道を開ける石像を横目に大廊下を抜けていく。


結論から言うと僕達は戦いに勝利した。それも圧倒的な勝利だ。
頑強そうな石像にはクローンエンブリオ程の耐久力はなく、また少女の結界もフォルシュのそれに比べたら物の数ではなかった。
最近熟練した強い人達と同行したりフォルシュの様な強敵と戦う事が多かったから分かりにくかったけど、僕達もそれなりには成長していたようだ。
ふわもこ達も自らの成長の程に満足しているようにも見える。


一方で僕は戦った相手の事に思考を移す。
彼らは見て分かる通り王城の人ではないと思う。
そんな彼らが何を思い、何を望んであの場所の門番を務めていたのだろうか。
可能性はいくつかあるが決定的な要素はないし、これ以上詮索するのもよくない。
ただ僕は今日の出来事を頭の隅に残しておくことにした。




・〜・〜・〜・〜




次の日。

昨日とは打って変わって僕達は女神の泉と呼ばれる水辺へやってきた。
この辺りには水の質がいいらしく、水棲ふわもこであるシフォンの頼みもあって様子を見に来たのだ。
最近は色々な所に行き来していたし、ちょっとした休憩兼気分転換となるといいかな、と思う。
僕は楽しそうに水辺ではしゃぐふわもこ達を見ながら歩みを進める。

不意にフェリオが遠くを見ながらそう言った。
僕達がその視線の先を見ると、そこには二人の男女が立っていた。
男性の方は白い軍服、女性の方は白いケープドレス。

どうしたものかと思っていた僕達に男性は気さくに話しかけてきたが、女性はそれを止めて高圧的にレイピアを突き付けてくる。
似たような色の服を着ているが行動や性格は対照的だ。

あの様子では問答無用で戦う事になるだろう。
残念ながら気分転換はここまでのようだ。

僕達は昨日同様相手を警戒し、戦闘態勢を取った――

頭を撫でながら