しかしそれが、私が過去に経たものの追憶であると確信させるのは、どうしようもないほど、この胸を締め付ける痛み。息をすることさえままならず、視界のすべてを滲ませようとするこの涙こそ、私の過去から滲みでた悲しみ。

それは、今の私が泣いているばかりではなく、過去の私が抱いた悲しみ。流した涙。

ルブナンが次に見せたのは、城の前の広場に並んだ多くの『兵士』。
猛禽の頭部を持ち、獅子の身体に蝙蝠の翼を持ったものや、大蛇の頭部に馬の胴体を持ったものもいれば、人のように二足歩行をし、全身が粘液で覆われた、両生類の様態を持つものもいます。その他、一人たりとも同じ形をとることのない数多の彼ら全てが、私を見つめています。

彼ら『兵士』の他には、『人間』が、『兵士』とは距離をとった場所で、そして彼らの幾人ばかりが私を見て、残りは、集っている『兵士』たちをじっと注意深く見ていました。

本当は、『兵士』も『人間』も、もっと多いはずです。
おそらくは、この一件で、再び、抑制されていた反発の火の手が再度強く吹き上げて、
『兵士』と『人間』の衝突が、どこかできっと行われているのでしょう。

今にも雨が降り出しそうな曇天。
湿った風が、無数に立ち並ぶ旗を、音が立つほどに叩いては抜けて行きます。

すべての光景が、ここからは見渡せました。

ここは、処刑台なのですから。

低い声が響き渡ります。厳正な、そして確かに責め立てる、棘の感じさせる声。

私のすぐ傍に立ち、声を投げかけるその男性は、いつぞやの食事会で挨拶したことのある『人間』でした。

そのときに見せた優しい微笑みも、今では翻って問い詰める刃となって、その言葉と振る舞い、視線の中に現れます。

何故殺した、何故裏切ったのだと。
『人間』の、豊かで安全な暮らしを与えられ、あんなにも満たされ、愛されていたであろうに、何故。

それは、当然の、無言の詰問。

だから私は、罪に対する罰を、甘んじて受け入れる、いえ――

私は、罰されなければいけない。

――『世界追放』。それが、この世界『クルーシブリア』の最高刑罰。

『クルーシブリア』において、死は終わりではありません。
この世界において死したものは、他の魂と混ざり合い、再度この世界に生を受けます。
それ故、我々『兵士』は、殺し合うことを怖れず、厭わず、ただ仕えるべき『人間』の命令を受けて、
戦いの日々を送っているのです。

故に、そうした魂の循環から永久に失われる、『世界追放』こそが、この世界においての真なる破滅。
魂は巡らず、ありとあらゆるものから永遠に隔てられる。
隔てられた魂は、触れ合うこともなければ、当然、混ざり合うこともない。
私を愛おしんでくれたアナの魂とも、命のやり取りをした幾千の強者たちとも。

私は永遠に遠ざけられる――罪故に。