妖精に手が向けられる。　腰についているベルトが光ると、赤い光が妖精から手に向けて集まっていく。

部屋中に、耳を裂くような悲鳴が響く。

身体の内側を握りつぶされるような激痛。　それと同時に、体の中から絞り取られるように、魔力が抜かれて行く。

赤髪の妖精は床に落ち、ピクリとも動かない。精製された強化外骨格に不調が無い事を確認した男―フィリアス達は「ダークフェアリー」と呼んでいるようだ― は、妖精を摘み上げ、机の上に放り投る。　

そういって、男は部屋を後にする。




























―ｶｯ―





衰弱が始まっている妖精に対し、男は興味を無くし始めていた。



―ｶﾝｯ―


使えない道具を生かしておく価値は無い。強化外骨格を転送できなくなるほど魔力が無くなったら、ローバルに残りの魔力を与えて用済みだ。




『妖精はローバルの餌であり、自身の計画のために用いる「道具」でしかない。』

　




そう考えていたために、気づかなかったのであろう。



―カッ―




妖精を壁につなぐ鎖が劣化し始めていた事。



―ガツッ!―



その鎖の一点を、何度も叩いたような傷があった事。





そして…

彼女は「道具」ではなく、意志を持った「生物」である事。

フェアリードライバーのバックル部分を展開すると、電子音と共に穏やかな光を放ち始めた。

妖精の魔力で宝玉を作製し、バックル部分にセットする。
シュウスケの全身に強化骨格が瞬時に転送され、戦闘準備が完了した！