たたかいがおわっても、なんとなくぼうっとしている猫。
そんな猫をみかねて、シュテルンがこえをかけました。


「ロクってばどうしちゃったの？？なんかヘンじゃない？？」


猫はシュテルンをちらりとみて、ためいきをつきました。


『シュテルンはなやみがなさそうで…ううん、なんでもないのです…』


きらくでいいといいかけて、シュテルンとのけいやくのことでいろいろあったのをおもいだして猫はことばをにごしました。

いつでもにこにこのシュテルンはあいかわらずわらったままです。


「なになに？なやみごと？？」


猫はこくりとうなずきました。


『でも、シュテルンにははなしてもしかたのないことなのです。』


すこしトゲのあるいいかたに、シュテルンがめげたようすはありません。


「ふーん、そう？でもさ、ぼくでよかったら聞くよっ？？
はきだしちゃえばすっきりするかもしれないからねっ！！」


いままでの猫であったなら、だれかにはなさずずっとじぶんのこころにしまっておこうとおもったことでしょう。
ですが、いまのなやめる猫のこころをゆりうごかすにはじゅうぶんなものでした。
だいたい、はなしたところでどうせなにかがかわるわけない。

そうおもって、猫はいままでにあったことをぽつり、ぽつりとシュテルンにかたりはじめました――





























「ふぅん？そんなことがあったんだねー！？」


すべてをきいたシュテルン。
そのまますこしのあいだだまってうつむいていましたが、いきなりかおをあげていいました。


「それならさ、そのししょーさんとセバスチャンさんにあいにいこうよっ！！」


おどろいたのは猫です。


『きいていなかったのです！？小生はししょーたちを――』


「でもさ、いまはそのことをこうかいしているんでしょ？？」


もちろん、こうかいしているにきまっています。
でも、猫がいるとふこうになってしまうだろうから――。
すきでししょーたちにあんなたいどをとるはずがありません。

猫がうなずくのをみてシュテルンは、


「だったらさ、どうしたらいいかなんてかんたんだよっ！！
わるいことをしたら、ごめんなさいってあやまる！！これしかないよねっ！！」


にっこり猫にわらいかけました。


『そんなかんたんじゃないのです！！
小生はししょーたちにゆるされないことをしたのです！！
それに小生といたら――』


「――ふこうになる？？」


あらためていわれて、ドキリ、としんぞうがはねました。
シュテルンのひとみが、猫をじっとみつめています。


「でも、ぼくはロクとあったことがふこうだなんておもってないよ？？
むしろあえてよかったっておもってる。」


『それは――まだまわりをふこうにするほどのちからがないからだとおもうのです。
ちからがおさえきれているから。でもいずれは――』


「――それでも、だよ。」


猫のことばをさえぎって、しずかにシュテルンがこたえました。


「まえにいったよね？？ぼくはみそっかすだったって。」


猫はシュテルンのはなしにみみをかたむけながら、こくりとうなずきました。


「でも、ロクとあえてけいやくしてもらえた。ぼくはいらないこじゃない、だれかのやくにたてるんだって、そうおもったらこころがあったかくなって――うれしかったんだ。」


だからさ、とシュテルンはつづけて


「もし、このさきロクのまわりにいるぼくがふこうになるっていうんだとしても、ぼくはいっしょにいくよ？？
だって、ロクのそばにいることが、いまのぼくのしあわせなんだもの！！」


にいっ、ととびきりのえがおを猫にむけました。
そのえがおはとてもまぶしく、猫はめがはなせませんでした。


「だからさっ、ししょーさんたちにもきちんとはなしてあやまってみようよ？？
そりゃあ、ゆるしてくれるかはわからないけれど・・・・・ぼくもいっしょにあやまってあげるからさっ！！」








ああ




ほんとうに




よぞらにきらめくほしのようにまぶしい


















『…小生は』



『小生は、よわむしで――そういわれてもこわくてたまらないのです――
ししょーたちはゆるしてくれないかもしれないし、それに…けっきょくふこうにするのはきっとかわらないのです――
……それでも、ほんとうに小生といっしょにきてくれるので――
ううん、いっしょに…きて、くださいなのです、シュテルン。』



シュテルンをみつめるひとみは、おちつかなくゆれて。
まるで、まいごになってひとりぼっちでさまようこどものように、ひどくふあんそうな猫のすがた。
でも――


「うんっ！！もちろんだよっ！！」


まをおかずにあかるくこたえるシュテルンに猫は――


「…ありがとうなのです、シュテルン。」


めじりになみだをにじませながら、こころからのえがおをうかべました。

砕いて見せることはできないけれど、と続けて。

そう言うと、近くにいたうぃすぷさんに2本渡す。
その色を見れば、光と闇であることがわかるかもしれない。

一方はすぐに輝き。

もう一方は、いつまでたっても何も反応しなかった。